現在介護職員だけではなく保育士も人員が不足しており、深刻な問題となっています。この解決策として、厚生労働省は「医療・介護、福祉サービスの基盤整備に関する取組」を発表し、資格統合についてふれました。資格統合の制度が導入されれば、介護福祉士の資格を持つ方が、看護師を目指す場合に従来よりも約1年短く看護師資格を取得できるようになるなど介護職員の今後の働き方に大きな影響を与える可能性があります。今回は資格統合の内容やメリット・デメリットについてご紹介します。
目次
資格統合とは
厚生労働省によると、2025年には介護職員が約30万人不足するとされていますが、その一方で保育士は少子化に伴って将来的に余剰が生まれることが予測されています。また地方の過疎化が深刻化しており、介護施設や児童福祉施設が人手不足により存続困難となることが予測されています。
そのため厚生労働省では介護、保育、障害者施設を1つにまとめ、こうした施設で柔軟に働くことができる方を増やすために、介護福祉士、保育士、准看護師の資格統合を検討しています。少人数で福祉サービスを提供することが可能となり、地方の施設閉鎖も免れることができるのです。
この案は元々、フィンランドで導入されている「ラヒホイタヤ」を参考にしています。ラヒホイタヤとは「日常ケア」を意味しており、准看護師、歯科助手、保育士などの保健医療資格7つに加え、ホームヘルパー等の福祉資格3つを一体化させた新たな資格のことです。この資格を取得するためには3年間要し、単位の取得に加えて、現場での実習が必須となっています。
こうした制度を導入することによって、日本の深刻な介護職員不足に歯止めをかけることが期待されています。
資格統合のメリット
人手不足の解消
介護施設、保育所、障害者施設などの福祉施設を一体化し、幅広い福祉の分野に対応できる人材を配置することで、少人数で福祉サービスを提供できる体制を整えたいとしています。
高齢者の活力アップ
子供と触れ合うことで自分の役割を発見し、意欲が高まることが期待されます。そうすることで日常生活が改善され、会話も促進されます。また「人の役に立つことができた」という充実感を味わうことで、日々の生活の向上に繋がります。
子供の心が豊かになる
高齢者や障害者と接することで、他人への思いやりや優しさを身につけることが期待されます。幅広い世代との関わりを経て、自らの視野が広がるとともに、人の気持ちを考えて行動することができるようになるでしょう。
資格統合のデメリット
実現への高いハードル
乳幼児を対象とした保育と高齢者を対象とした介護では、求められる技術が大きく異なり、現実的に資格を統合するのは厳しいのではないかという声が多数あります。
サービスの質の低下
上記で述べたように、求められる技術が大きく異なるため、1日の中で介護・保育両方に携わらなければいけなくなった場合、切り替えが非常に難しいことが予想されます。また根本的に全てのサービスを全体的に熟知するのは非常に難しく、サービスの専門性が失われてしまう可能性が考えられます。
体力的・精神的負担の増加
介護・保育両面をカバーし人員不足を解消するというのは社会的には良い案ですが、働く側からすれば負担の増加になります。覚えなければいけない知識が増えるということは、それだけ業務幅が広がるので、こうした職員の負担軽減をどのようにカバーをするのかを考える必要があります。
まとめ
資格統合によって人員不足、施設不足を解消することができたら、日本の社会にとって非常にプラスに働きます。しかしその一方で資格統合によるデメリットもあり、解消が急務となっています。