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訪問介護や定期巡回が在宅生活を基礎から支える
介護業界での就職や転職を検討する時、一度は目にするのが訪問介護。
施設型や通所型の介護事業所と異なり利用者の自宅にてサービスを提供することが大きな特徴で、事務所は最低限会議などが実施できれば認められるため、小さな事務所を町中で見かけるかも知れません。
一方で訪問看護や居宅介護支援事業所、通所介護などの事業所と同じ建物に併設されることもあり、その場合は大きな事務所で大規模に運営されるため、見かけでは規模や仕事内容、規模などが分かりづらいこともあります。
経験したことのない人からすれば何をするのか、どのように運営されるのかが見えづらい訪問介護という事業所について、同様に利用者の自宅に訪問しサービスを提供する定期巡回と併せてご紹介していきます。
1. 訪問介護・定期巡回とは
まずは定期巡回について解説していきます。
定巡と略されることも多い定期巡回、正式には定期巡回・随時対応型訪問介護看護という名称の事業所は平成24年に創設された比較的新しい事業所です。
特に重度者の在宅生活を支えるため、仕組みとして脆弱な訪問介護サービスを補強することを目的に新設され、特徴として以下の3つが挙げられます。
①日中と夜間を通して訪問サービスを実施する。
②訪問介護と訪問看護の両方を提供する。
③定期的な巡回と必要に応じた随時の対応を行う。
運営上は看護師の雇用や報酬単位の違いなどがありますが、訪問介護員として勤務するという視点であれば上記の特徴を持った訪問介護事業所であると考えていいでしょう。
そもそも平成31年時点でも全国に1000ほどの事業所しか存在せず、なかなか関わることのない事業所でもあります。
訪問介護、定巡のどちらも利用者宅へ訪問して介護サービスを提供するという点では共通しており、在宅生活を支える介護サービスです。
2. 訪問介護・定期巡回の仕事内容
ケアマネの作成したケアプランに応じて、個別性の高いサービスを実施する 訪問介護は在宅生活を続ける利用者のニーズに合わせて実施されます。
一般的な他の介護サービスと同様にケアマネジャーがケアプランを作成しますが、サービス内容は様々です。
例えば、外出が困難な方への買い物の代行、調理が困難な方に対して調理・食事の提供、デイサービスを利用している方の朝の送り出しなど、生活のスタイルや他の介護サービスの利用状況に応じて、サービス内容は多岐にわたります。
利用者の自宅にてサービスを提供するため、利用者宅の物品や設備を利用するという点は施設での介護との大きな違いになります。
狭い浴室での入浴介助やベッドではなく床臥床からの起居動作介助、下用タオルなどが無い中でのおむつ交換といった介護は、訪問介護を経験したことのない方にとっては難しさを感じるかも知れません。
3. 訪問介護・定期巡回の職場環境
一人だけでのサービス提供のプレッシャーと気楽さがある
事前にケアマネジャーがサービスのおおまかな内容をケアプランに定め、サービス提供責任者がより具体的なサービス方法や時間配分などを手順書として作成、同行して初回の訪問を行うなどサービス実施にあたっての調整はしっかり行われますが、その後のサービスの実施は原則的に一人です。
介護の実施に自信のある現場経験者にとっては、上司の視線を気にする必要がないというのは肩の力を抜いて介護を実施することが出来るという意味で気楽かもしれません。
人間関係が退職理由の大きなウエイトを占める介護業界においては、働きやすい職場と考えることも出来るでしょう。
一人で訪問して介護を実施するという点は当然ながらデメリットにもなります。
誤嚥や転倒などの介護中の事故はもちろんのこと、独居での生活中の事故を発見するリスクなどもあるでしょう。
訪問した際に倒れているところを発見するなど、事故の発生時などには上司に連絡し指示を仰ぎつつも初期対応を自身で実施する必要があります。
一人で介護を実施するということのメリットとデメリットを十分に把握し、自信がない場合は教育制度の行き届いた事業所を選ぶか、自信を持って介護が提供できるようになるまでは他事業所で経験を積む方が安心と言えるでしょう。
雇用形態について 正社員は少ない傾向があるが、その分融通が効きやすい可能性も 特に訪問介護では職員に正社員の割合が少ないことも特徴と言えます。
訪問介護では訪問中以外に報酬が発生しないため、月給で固定給を支払うことになる正社員を雇用しづらいという点が正社員雇用の難しさとなっており、正社員が管理者のみの事業所も少なくありません。
訪問している時間中にのみ時給が発生する非正規雇用が一般的であり、収入や働き方に融通が効きやすいことから家事と両立しやすく、かつ清掃や調理、買い物など業務内容にも家事の内容が含まれるという、元々女性率の高い介護業界でも特に女性の割合の高い事業形態と言えます。
定巡に関してはまだまだ事業所自体が少なく比較が難しいですが、夜間にもサービスが発生しやすいことから正社員の割合は少し高くなるかも知れません。
介護内容も制度として重度者を対象として設計されているため、身体介護の割合が大きくなるでしょう。
3.訪問介護・定期巡回の1日のスケジュール
非正規雇用ではフレキシブルに働き方を選択出来る場合も多い
利用者の生活スタイルに合わせて訪問を行う訪問介護では、利用者によって訪問の時間や頻度が異なります。
そのため、朝出勤後すぐに一軒目のお宅へ移動、一軒目でのサービスが終わり次第二軒目へ向かい、以降退社まで移動と訪問を繰り返すというように、訪問でスケジュールが埋まることはほとんどありません。
正社員であれば訪問と訪問の間に介護請求業務やケアマネとの連絡調整、担当者会議などのデスクワークが入ることになるでしょう。
非正規雇用では、そもそも訪問予定時間以外は時給が発生しないことになります。
非正規雇用では自分の担当する利用者の人数などをコントロールすることで、フレキシブルに勤務することが可能な点は、他の介護事業所にはない魅力と言えるでしょう。
訪問しての介護サービスの実施以外では、事業所によって異なりますが、以下のような場合に事務所へ赴く必要があることもあります。
①会議や研修での定期的な事務所勤務
②事務所に一度集合してからの朝礼
③一日分の記録を毎日夕方に提出する
自宅と事務所の距離、対応する利用者宅の範囲、研修などの体制を確認することでスケジュール感を確認しておきましょう。
定巡では夜間に対応する必要があるため場合によっては夜勤が発生しますが、訪問介護でも深夜加算は制度として存在するため、深夜の訪問サービスを受け入れている事業所では深夜勤が発生します。
4. 訪問介護・定期巡回に向いている人
訪問介護は施設型や通所型の介護事業所とは働き方が全く異なるため、向き不向きの大きな事業所であると言えます。
最後に、訪問介護に向いている人をご紹介します。
①介護経験者で人間関係に疲れた人
訪問介護は良くも悪くも一人でサービスを提供する場合がほとんどです。
人間関係を理由に退職を選ぶ人も多い介護業界では、ストレスなく働けるという人もいるでしょう。
②自分のペースで介護を行いたい人
訪問介護では契約の時間内に決められたサービス内容を実施する必要があるものの、時間に追われて仕事をすることがあまりないというのも働きやすさに繋がるかも知れません。
特に少ない職員で多数の利用者の生活を支える施設勤務に疲れた方にはオススメです。
③車やバイクの免許を持っている方
移動が発生しやすく、駐車場のあるお宅ばかりでもないため、バイクの免許をもっていると身体的な負担が小さくなるかも知れません。
④身体的な負担を避け、長く介護現場で働きたい方
自宅で生活を続けることが出来ているという点で重度者の割合が少ないことも訪問介護の特徴で、重度化の進む介護業界においては身体的な負担が小さく、女性職員の割合が多い一因になっています。
自分の担当した利用者に長く訪問を続ける職員も多く、長期的に介護現場で働きやすいとも言えます。
⑤家事が得意な方
利用者は自宅で生活されているため家事を行うサービスが多く、家事が得意な方は仕事に直接活かすことが出来るため、やりがいを感じることでしょう。
⑥施設介護経験者であれば、定巡もオススメ
定巡では定期的な巡回、1日に複数回の訪問など、重度者を対象とした制度設計となっているため訪問介護と施設の中間のような訪問スケジュールになることが考えられます。
施設介護経験者であれば違和感も小さく働けるでしょう。