私は現在、管理者(施設長)としてショートステイを10施設任せられていますが、元から介護業界にいたわけではありません。他業種にいた私がなぜ介護業界に飛び込んだのか、介護の仕事を知らない私がどのようにして管理者になったのかご紹介します。
製薬業界から介護業界に転職したきっかけとは
介護業界に入る前、私は製薬業界で仕事をしており、会社の中でもそこそこのポジションで勤務していました。しかし、会社は製薬業界で生き抜くために何度も他の会社と合併を繰り返し、その影響でいつしか自分のポジションはなくなり、退職することとなりました。
退職後はマネジャーのプライドが捨てられず、転職には苦労しました。そこで製薬業界ではなく別の業界で働く決断を下しました。
40代後半になってからの転職は真に厳しいものがありました。
そこで介護業界に転職するきっかけとなったのが、ハローワークの就職相談員からの勧めでした。相談員の方からマネージャー経験を活かせる所として、ショートステイの管理者候補の求人を紹介してくれたのです。
面接前には、医療関係で経験した知識を活用して、介護業界について学びました。そして自分が想定していたよりも簡単に内定をいただくことができ、介護業界に飛び込むこととなりました。
介護業界に入って驚いたのは、実に様々な経歴の持ち主の方がいること。
製造業や金融業、サービス業などの会社員から、主婦やアルバイト、福祉系の大学や専門学校出身者、福祉系以外の大学や専門学校出身者など幅広い経歴を持つ方ばかりです。
ショートステイの管理者になるまでの道のり
ハローワークの紹介で介護事業所に転職した私が最初に配属となったのは、ショートステイの管理者代理でした。最初の3ヶ月間は勉強と経験を積むための見習い期間で、その過程を経て正式な管理者となります。この見習い期間は、初めて介護業界を経験する私にとって大変過酷なものでしたが、管理者の仕事に向き合う契機にもなりました。
私の最初の仕事は、介護歴の長いベテラン女性介護職員の方と一緒に利用者様の家に迎えに行くことでした。ここで私は同伴していた女性介護職員の方の言葉遣いに衝撃をうけました。
私は製薬会社で働いていたため、お客様に対する世間一般的なマナーは抑えているつもりですし、サービスを提供する側にとってそれを行うということは当然であると認識をしていました。しかし、同伴していた女性職員の言葉遣いはサービスを提供する側とは思えないものでした。それに利用者様やそのご家族からクレームをうけても、改善をするつもりがないように見えました。
この経験が私にとって、理想的なショートステイとは何かを考えるきっかけとなり、利用者へ高品質のサービスを提供できるショートステイにする目標ができたのです。
配属後3か月間の見習い期間を経て、私はまず人材の教育に力をいれました。具体的には、私が今まで学んだ言葉遣いや挨拶など、より良いサービスを提供するためのマナーについてです。初めのうちは、様々なバックグラウンドを持つ職員全員にうまく伝わらず、対立をすることもありました。なかには退職してしまう方もいて、ただでさえ人手不足だった環境がさらに厳しいものへと変わってしまいました。
前職である製薬会社での経験から保険請求の内容や計算方法の知識はもとからあり、短期間で介護保険請求業務を覚えることができました。また病気と認知症への知識もあったため、サービス担当者会議でのアセスメント作成もすぐに覚えることができました。しかし介護の実務においては、右も左も分からない状態でした。
そのため、私は管理者として施設運営の責任を負うべく、前管理者に相談しながら一人で夜勤や日勤も行いました。精神的にも体力的にも辛かったこの経験の中で、私は排泄介助、食事介助、入浴介助などの介護業務全般を徹底的に覚えることができました。また同時に、介助を通して利用者様との間に強い関わりもできました。
このことが大きな喜びとなり、今でも私の中で大きな原動力となっています。この辛い経験を乗り越えることができたからこそ、利用者様との繋がりの大切さを感じ、より一層ショートステイの改善を強く心に決めました。
管理者として成長を実感するまで
人の出入りが激しい介護業界で、職員の補充を本社に要望しましたが、人材不足から要望は通りませんでした。そのため私は施設へ応募してくる方と地道に面接を行い、一人ひとりの仕事に対する意気込みや介護という仕事のとらえ方など真剣に耳を傾け、良い人材を見つけ出そうと努力しました。
面接を根気よく続け、特別養護老人ホームで経験を積んだベテランの女性介護職員に出逢うことができました。この方は前の職場の管理者と考え方が合わずに辞めてきた人でしたが、高齢者との心の繋がりを大切にする人で、採用を決めました。この方とともに施設内で働くようになり、職場は大きく変化しました。
その介護職員は辞めずに残ってくれた若い介護職員に対して熱心に指導をしてくれたり、別の介護施設から優秀な職員を紹介しくれたりと私の力だけではできなかったことをサポートしてくださりました。
また、私自身も管理者としてうまく仕事を振り分けることができるようになり、一人で抱え込むのではなく、周りを頼ることの大切さを学びました。仕事をそれぞれの得意、不得意によってバランスよく振り分け、職員一人一人の顔も以前より晴れやかになっているのを見たとき、やっと管理者としての仕事を全うすることができたと実感しました。
今では会社が運営する30施設以上のショートステイの中で利用率が常に120%以上のトップの施設となりました。この結果は自分ひとりの力ではなく、利用者に対する心からの気遣いができる介護職員のお陰です。私は会社員時代で経験ができないような、心と心が繋がりを持つ世界の素晴らしさを経験し、管理者としてあきらめず、自分を信じて進み続ければ厳しい介護現場を変えることができるきりと実感しました。
今まで外側から見ていた介護の世界の内側に飛び込んでみると、一般的な会社では味わえない大きな社会貢献を介護という仕事を通じて行えていると思います。介護業界で生きていくための術を、そして財産を、私はショートステイ管理者という経験から得ることができました。
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