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太田悠貴さんの写真

認知症患者特化型のデイサービス「おたがいさん」を立ち上げた、代表取締役太田悠貴さんにインタビュー。利用者様自身に1日のスケジュールを決めてもらうなど、従来の介護サービスの概念に囚われない自由で柔軟な発想や取り組みについてお話を伺いした。
また、太田さんの今までの介護人生や、認知症の方との向き合い方についてもを教えていただいた。暮らしの中での「当たり前」を当たり前に提供するための工夫が学ぶことができるだろう。

楽しみ上手は、得ばかり

高校を卒業後、1年間介護の専門学校で学び、ヘルパー1級を取得。そして介護の業界へ。介護職を選んだきっかけは、特養にいる曾祖母に面会に行っているうちに、純粋に介護の仕事が楽しそうにみえたことだそうだ。

 

最初は、入居者約120名の大きなデイサービスで、職員の方は約20人~30人ほどの施設だった。太田さんも午前中だけで、なんと約60人入浴担当していたそうだ。その忙しさの中でも、実際に介護現場で働くことで大きなギャップを感じることはなかったという。

 

介護の仕事を始めた頃は大変でしたか?という質問にも、「つらいという気持ちは、なかったですね。お金をもらうとはどういうことか、働くとはどういうことか考え始めて、社会勉強しないとなあといった感じでした」

 

また、太田さんは小さな楽しみや喜びをみつけることを大事にしていたそうだ。どうやったら楽しくなるかということを自然に考える癖があるという。前回より、五本指靴下をスムーズに履かせてあげることができたことなど小さな楽しみの連続。そんな風に失敗や成功を繰り返す中で、始めは発見や吸収の日々だったそうだ。
太田悠貴さんの写真
その後、リハビリの勉強をしたいという思いから、病院のリハビリ助手や看護助手等の経験を積んだ。ここでの楽しみは、リハビリにより回復する方をみていることはもちろん、「寝たきりの方を介護する」という点での学びや発見も貴重な経験になっていると太田さんは話してくれた。

 

「どのように過ごすにしても、時間は変わらず流れていきますよね。どうせなら、少しでも楽しめた方が良いと私は思うんです。仕事中だけでなく、移動中なんかも、いかに自分のモチベーションをあげられるか自然と楽しみを探す癖がありますね」

デイサービス立ち上げ~いくつになっても、チャレンジ~

「おたがいさん」という名前は独立するときから決めていたという。介護をするには、相互関係が大切という想いからだ。老人ホームをやることが最終的な目標だったが、資金の問題や、地域に根付いた施設を築きたいという想いから、まずはデイサービスから始めようと考えたそうだ。今まで沢山の施設の経験で感じた「もっとこうしたい」ということは、全て今実行しているそうだ。

~自分の手で収穫する人参ときゅうりは一段と美味しそう~

 

初めてみた方は、これがデイサービスでの光景だということに驚くかもしれない。利用者の方たちは、元々ご自身の得意だったことや、好きなことを今でもこのように活動の中で取り組んでいる。畑での作業や、料理、椅子を作ることまで。そのパワーには筆者も大変驚いた。自発的な行動を、利用者の方にして頂く際に、危険やリスクを回避しながら活動ができる理由をお伺いした。

 

「もちろん、想定される危険はあらかじめイメージし、準備も行っています。しかし、スタッフがもし考えすぎて二の足を踏んでしまうようなら、まずはやってみてほしいと伝えています。利用者の方が何かをしたいという想いがあるのであれば、できる限り叶えたいです」

 

リスクを想定しすぎて前に進めないことよりは、チャレンジすることを大切にしている太田さん。また、スタッフの方たちも他の施設で、介護においての保守的な考えに元々疑問を持っている方も多いそうだ。

 

次に、利用者の方のご家族や周りの方の反応はどのようなものか、反対や心配の声はあがるのかお伺いした。

 

「ほとんどないですね。あらかじめご家族にもご説明させて頂いています。もしかしたら怪我をしてしまったりするかもしれないと。しかし、ずっと座っていても体力も落ちてしまうので、どういったケアを希望されるか確認をしています。始めは少し心配されているご家族の方も、実際に活動されている写真などをお見せすると凄く安心するみたいですね」

 ~交通安全活動にも参加・地域との交流も~

 

みなさんとっても良い表情をしている。交通安全活動に参加したり、職員のお子さんの面倒をみたり。地域や人と活き活きと関わっている様子が伝わってくる。こんな表情を見ることができたら、ご家族は安心し、嬉しいに違いない。実は、こういった1日の様子は、ご家族だけではなく、スマートフォンのアプリを介し、スタッフ全員で共有されているそうだ。出勤していないときにでも、施設でどんな生活をしているか把握することができるのだ。利用者の方へはもちろんだが、スタッフの方への思いやりでもある仕組みだ。

 ~おたがいさんの職員のお子さんと一緒に・様々な年代の方との触れ合い~

 

利用者の方たちの生活の仕方は本当に多岐にわたる。

 

たとえば、9:00~10:00は利用者の方たちのバイタルチェックを行い、その日のプランを決める。

10:00~は、何をしたいのか何を食べたいのか、たとえば、お饅頭が食べたいという場合、そのお饅頭は、買いに行くのか、食べに行くのか、それとも作るのか。選択肢は様々だ。そして今では、地域の方達と連携を取ることで生まれたプログラムに、出張レストランもある。近くのレストランのシェフが施設で美味しい食事を作ってくれるのだ。外出が難しい方もプロの味を楽しめる。

 

こうした地域の方たちとのつながりはどのようにして生まれたのかお伺いした。

「高齢者の方も、自分達と同じような生活を望んでいること、そして、“工夫次第で同じような生活ができること”を地域の方に知って頂くよう心がけました。始めた頃は、利用者の方は3名ほどだったのですが、近所のお店へ一緒にお茶をしに行ったり、地域の方たちにはいつでも遊びにきてくださいねと声をかけ続けたりしました」

 

地域からの理解を得ることができるようになってきたと感じるようになるまでには、約1年かかったという。みんなで少しずつ、一歩ずつ歩み寄り、今のおたがいさんにつながっているのだ。
太田悠貴さんの写真

プロに聞く5つの質問~認知症への理解の仕方・考え方~

Q1.家族がイライラせずに、認知症の方に接するための考え方や具体的な取り組みはありますか?

 

A.家族がイライラしてしまうことは、仕方ないことだと思うんです。私もきっと家族が認知症になったら同じように思うと思います。その負担を少しでも軽減するために、私達のサービスがあると思うんです。なので、家で過ごす時間を踏まえて、スケジュールに組み込んでいます。
太田悠貴さんの写真

Q2.実際にどのようにご家族のお悩みを解決されているのですか?

 

A.一緒に暮らす家族が、いま何に困っているのかヒアリングしながら1日のプランに組み込めるようにしています。たとえば、家で夜眠らなくて困っている方の場合、1日に必要な活動量が10だとしたら、おたがいさんでの活動量を8~9割にすることで、自然とおなかもすき、よく眠れる。本来の健康な生活により近づけるよう工夫しています。

 

Q3.活動をすることを拒む方に対して、工夫していることはありますか?

 

A.実際に入浴したくないという方もいましたよ。当然のことだと思います。僕らだって知らない場所に連れて行かれて、知らない人にいきなりお風呂に入りましょうとか、さあ食事しましょうと言われても、拒みますもんね。特に認知症の方にとっては、何回か行ったことのあるデイサービスだとしても、毎回の経験が初めてのこと。

そこで、実際にしていることは、前回こんなことをしたよねと写真を一緒に見て少しずつ覚えてもらったり、納得してもらったり。すると利用者の方も安心して、おたがいさんでの活動を始めてくれました。そして、汗もかいたしお風呂に入ろう!とご本人も拒むことなく入浴してくれました。

 

Q4.帰宅願望が強い方や、暴力を振るわれる方と向き合うために大切なことや、アドバイスはありますか?

 

A.なぜ帰りたくなるのか、なぜ暴力的になってしまっているのかアセスメントを しっかりとってみてください。
認知症状のため、欲求をうまく伝えきることができず、居心地が悪いけど、気を使って「帰りたい」と話されているだけかもしれないですし、トイレなのかもしれない。そもそも、そこにいる理由がわからないのかも。

突然知らない場所に連れてこられて、知らない人ばかりの空間なら認知症の人じゃなくても帰りたくなりますし、僕自身も帰りたくなります。でも、そういう気分にならないときもあるはずです。何か得意なことをしているときや、誰かのお世話をしているとき、誰かに認められ、感謝されるときなんかはその例だと思いますね。

 

そんな時間を少しずつでも作ってみられるのも一つかもしれません。その背景にあるものを考えてみて、言われないときはどんな時なのか観察されてはいかがでしょうか?でも、帰りたいとずっと言われると人間なので、イラっともしますし、暴力的だと気が滅入っちゃうこともあるので、適度に気分転換を図りながらお付き合いされてみてはいかがでしょうか?
太田悠貴さんの写真

Q5.気力のない方に対して、どのように希望を引き出していますか?

 

A.恐らく、ご本人が希望を言ってもできないだろうと諦めてしまっていることが原因なのではないかと思います。なので、ここでなら想いが叶うかもと思いやすい環境づくりを意識しています。今までは、希望を伝えても実行が難しかったのかもしれないし、伝えても意味がないと思っているのかもしれない。

そんな場合には、無理に希望を聞きだすのではなく、他の利用者の方が希望を実行する様子を見てもらうようにしています。またその方が得意なこと、たとえば料理が得意だったら、あえてスタッフが料理をできなくて困っているように演出し、利用者の方の力が必要とされていることを伝えていますね。

 

決して、介護=「してあげる」ことではないと思うんですよね。一方的なものではなくて、一緒に生活をするということだと思うんです。ご本人がどう生活したいかを、あくまでサポートするという感覚が大切だと感じています。

太田悠貴さんの写真

介護バトン

山﨑史香さんからの質問
Q.10年前・10年後の自分に言葉を送るとしたらどんな言葉を送りますか?

 

太田悠貴さんのメッセージ
A.10年前の自分へ…沢山の方に会ってがむしゃらに目の前のことに取り組め
A.10年後の自分へ…みんなの住みやすい環境を創れている?
太田悠貴さんの写真

太田さん自身、沢山の方に出会ってお話を聞く中で、もっと早く出会っていたかったと思うこともあるという。

 

「会うべき人にはきっと必要なタイミングで会えるはずだと思います。でも、それらの出会いは自ら行動を続けないと叶わないことですよね。だから、沢山外にでて、沢山の人に出会った方が良いと思っています。そうして得た沢山の気付きや発見が重なって、夢でもあった老人ホームを2018年の7月からスタートします。施設の方だけでなく、地域の方も暮らしやすい環境を創っていきたいです」

クリックジョブ介護をご覧の方へメッセージ

去る場所、次の場所にもポジティヴな面を捉えて転職すると良いかと思います。ネガティヴな感情だけでの決断は、次の場所でも同じように悲観的な発見ばかりになってしまうと思うので。

自分の成長や、楽しみを少しでも見出した上での転職をしてほしいです。

編集者が伝えたい太田悠貴さんの魅力

お話をお伺いする中で感じた太田さんのお人柄は「冷静に物事を捉える温かい人」デイサービスやその他の施設を運営する上で大切な“判断力”をお持ちの方。そしてその判断力は、物理的なことだけではなく、“相手の気持ちを、相手の立場になって理解し、どんな行動でその気持ちに応えることができるか”を瞬時に判断できる方でもあるのだろうと感じた。

 

お話の中で「ただ、自分だったらどう介護されたいかしか考えていないんです」とおっしゃっていた言葉が印象的だ。太田さんのお話や、デイサービスでの取り組みの中で、何度もハッとさせられた。本当の意味で相手の気持ちを考えることの難しさ、そしてそれを当たり前にできる介護のプロがいることを知ったからだ。自分が逆の立場だったら?という想像力を失わずに、楽しみながら働く姿は、きっと周りのスタッフや、利用者の方からも熱い信頼を得ているのだろうと感じた。
太田悠貴さんの写真

<太田悠貴さんのプロフィール>
◆株式会社おおきにデイサービスおたがいさん 代表取締役
◆住宅型有料老人ホーム「仕事&役割付シェアハウスSUMIKA」開業
◆介護福祉士
◆地元の奈良県でも講演会を行う

 

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

     サービス提供者は、常に「自分がされるなら」を考えることで利用者のやり甲斐や生きがいを創造できるのではないかと思います。
     また、印象に残ったのは「おまんじゅうを食べたい」という希望に対しても、おまんじゅうを手にする手段を複数用意して利用者自身に選択してもらうという取り組みでした。それが画期的な取り組みに映るということは、それほど介護の現場がスタッフの都合で動いているということでしょう。今回の記事は反省と共に目から鱗の気持ちで拝見しました。

  2. 匿名 より:

    高齢者が少しでも望む生活ができる様に支えている太田さんの活動がとても素敵だと思いました。

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