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善光会のIOT導入に至るまで

システム化に成功している善光会では、まず現状の問題を把握するため、複数の職員の丸一日の行動データを採取から始めた。どういった作業に、どれくらいの時間を要しているのかという細かな作業データを数値化した。

そして、作業を3種に分類した。

  1. 直接介助(食事・入浴・排泄介助)
  2. 1)間接介助(見守・巡回)(2)間接介助(記録・申送業務)
  3. 清掃

これらの種類ごとの業務を分析し、直接介護の時間をより多く捻出するため、清掃は完全に外部委託に切り替えた。ここからは、間接介助を中心に、自動化の事例をご紹介する。

排泄・眠り・見守りの観点から、職員の負担軽減・入居者の自立支援どちらも成功!

1.『DFree』でトイレの“当たり前”を思い出してもらう

先日取材にお伺いしたトリプルダブリュージャパンの『DFree』も、非常に活用されているようだ。

膀胱データを数値化することで、排尿予測ができることはもちろん、そうしたデータに基づいて、排泄トレーニングにも成功しているという。勘に頼った排泄トレーニングでは、タイミングが合わずに失敗してしまうこともあり、利用者が身体的、精神的にも疲れてしまうケースが多かったという。

しかし、DFreeの排泄予測機能により、トイレでの成功体験を重ねることで、自分のタイミングで排泄できる喜びを再び感じることができた入居者が多いという。

そうした体験が、自然と自立支援に繋がり、結果おむつが外れた方も多く、おむつのコストも大幅に削減できたそうだ。

中西敦士さん
介護で役立つDFree(ディー・フリー)とは?排泄予測で、高齢者が自信を取り戻す ―世界も注目の実績や効果に迫る―
2019.3.14
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2.『眠りSCAN』『シルエット見守りセンサ』で見守り巡回業務、50~75%削減!

眠りSCANは、マットレスの下に敷いて利用するアイテムで、呼吸・心拍数のデータを計測し、睡眠/覚醒/起き上がり/起床等の状況をオンタイムで確認することができる。

また、シルエット見守りセンサは、各部屋に設置したセンサが働き、ベッドからの起き上がり、はみ出し、離床などの状況が駆けつける前に分かるようになったのだ。

様々なデータを掛け合わせることで、入居者の方はゆっくりと眠ることができ、職員も不必要な声掛けや見回りの負担が軽減された。「今は深い眠りについているため、起こさないでおこう」「起き上がりが確認でき、且つ排尿のタイミングも近いため、お声がけしてトイレにお連れしよう」などがその例だ。

導入前までは、日中意識が朦朧としご自身で食事をとれなかった方が、良質な睡眠をしっかりとることで、食事の介助が不要になるなど、これもまた自立支援に繋がる結果となった。それぞれの身体リズムに合った生活を送ることで、認知を防ぐ作用も発揮している。

移動はセグウェイ、ドライヤーはダイソン使用!細部に感じる介護業務に専念してもらうための思い遣り

人手不足と言われる業界だからこそ、「人の手」でなくても良い箇所はシステム化し、介護に専念してもらうための工夫が随所に感じられた。

野菜や植物を育てるプラントにも、日光浴や水やりを自動化したツールを導入し、職員負担を軽減。自然の温かさも忘れずに、効率化を実現している。

~自動で日光浴をする野菜プラント~

~外出が難しい利用者の方にも喜ばれる開放的な屋上空間~

 

その他、1回の夜勤での職員の移動距離は、約12~15kmというデータも算出し、セグウェイを導入することで、夜勤中の余計な体力消耗を防ぐことに成功した。過去にセグウェイによる事故も一度も起きていないという。

その他にも、骨伝導式のインカムを使用することで、職員同士の情報共有をスムーズに!

そして、労力を要する在庫管理業務では、おむつや備品の管理発注を自動化した。重さによって、製品の在庫数を管理でき、必要な部数が自動発注される。

その他に入浴時間には、ダイソンのヘアドライヤーで髪を乾かし、時間を短縮するなど、どこまでも職員が介護に集中できる環境づくりに余念がないことが伺える。

体力や時間に余裕が生まれることで、自然と1の直接介護にあてる時間を確保することが可能になり、本来の「やりたかった介護」に専念してもらうことで、職員のモチベーションもアップしているという。

介護システム導入のコツを聞く!

トップダウンでも、ボトムアップでも上手くいかない。両輪のサイクルを回すことが大切!

様々な介護施設のコンサルティングも担当されているサンタフェ総合研究所の佐々木さんに、システムを導入する際のポイントをお伺いした。

 

「介護ロボットの導入は、実際のデータや、施設ごとの需要にマッチして初めて活かすことができるものです。

どんなに経営側が製品を良いと判断しても、トップダウンだけでは利用者と一番接する現場の介護職員の抱える問題や必要性を把握せずに進んでしまいますし、どんなに現場が良いと判断しても、ボトムアップだけでは法人全体での必要性や、情報共有がされにくく、結果、施設全体でうまく活用することは難しいでしょう。

介護ロボットを導入する際は、組織全体で課題に取り組み、効果を最大限に活かせるよう介護オペレーション自体を改善、変化させていくことが重要で、介護ロボットはあくまで改善ツールの一つにすぎないという認識を持つことも大切です」

データに基づいたオペレーションの実現で、職員にも効率化が浸透

新しいツールの導入時に、現場の職員の方達の戸惑いはないかお伺いした。はじめの内は、やり方が変わることに抵抗を示す職員も多かったというが、導入してみて結果がでることで、職員の中でも、ツールの導入に対して肯定的な考えを持つ雰囲気ができあがっているという。

~iPhoneでアプリを活用されている職員の方~

 

ロボットや、AIは従来の介護の否定や、脅威になる存在ではなく、より良い介護をするための、一つのツールに過ぎないという実体験に基づく考えがシェアされているようだ。

100種以上のツール導入実証済みの善光会だからこそ開発できた“スマート介護”を可能にするアプリが、このたび誕生!

SCOP』でシステムの一元管理が可能になる

スマート介護プラットフォーム「Smart Care Operating Platform(SCOP)」が7月から提供開始になる。

左から矢島匠氏(キング通信工業株式会社)、中西敦士氏(トリプルダブリュージャパン株式会社)、宮本隆史氏(社会福祉法人 善光会)、伊藤秀明氏(パラマウントベット株式会社)

2019年7月11日(木)に赤坂インターシティコンファレンスで開催された記者発表会の様子

 

SCOP Now』は、DFree・眠りSCAN・見守りセンサの情報を、一つの画面に集約し、スマートフォンやタブレット等で簡単に操作・閲覧ができるようにしたアプリケーションだ。

複数のツールを導入すると弊害となっていた“一元管理のしづらさ”を解消するとともに、巡回や見守り業務を中心に、約37%の業務効率向上を実現し、直接介護の時間の増加を可能にした。

善光会理事の宮本氏は、今後は“ライフスタイルに合わせた多様な働き方や、海外からの人材確保”が必要であるとし、SCOP等を活かしたビッグデータを活かして、周辺環境との融合や今後のオペレーションの改善や、職員の教育・育成のツールとしても役立てていくビジョンを掲げている。

また、気になる費用だが、月額50円×施設定員数という価格で提供される予定だ。併せて、介護の記録業務の効率化に特化したアプリケーション『SCOP home』も2019年秋ごろに発売予定だ。

従来、紙に記入したものをPCに入力し直すなど、無駄が多かった作業も、タブレットで簡単に入力し、情報の共有保管ができる。

驚いたのは、システム開発者たちも介護業務を経験することで、アプリの必要性を肌で感じた上で開発に取り組んだという。現場職員、開発者の介護への想いのこもったアプリだ。

来年度は、さらに連携機器を拡大し、介護AIの導入も予定をしている善光会。これからも様々なソリューションの開発や、データの有効活用に期待が高まる。

社会福祉法人 善光会

2005年12月に設立した善光会では、都内でも数少ない複合施設サンタフェガーデンヒルズを運営している。また、2017年には社会福祉法人で初めて研究開発機能を持ち合わせた「サンタフェ総合研究所」を設立した。

質の高い介護サービスの提供、そして効率的な介護オペレーションの構築を目的とし、実際の介護業務の中で得た“生きたデータ”をもとに、介護ロボットや、システムを導入に成功している。

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