社会福祉士は将来性がない、仕事がない、社会福祉士の資格は意味がないといったネガティブな情報が一部ありますが、本当にそうでしょうか?
国家資格である社会福祉士は、高齢者介護、障害者支援、生活保護、児童福祉といった、すべての福祉サービスをカバーし、法的なサービス支援や相談に応じるのが仕事です。
介護職とともにAIが取って代わることができない仕事の一つといわれているため、今後需要がますます高まっていくことが想定されます。そこで今回は、具体的にはどのような場所で、どのような仕事をしているのでしょうか、社会福祉士の仕事を紹介します。
目次
2025年問題はすぐそこ!新たな課題も浮き彫りに
日本の現状をみると、少子高齢化が加速しており、2025年には団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」がすぐそこに来ています。所得格差がどんどん広がり、もはや富の2極化は当たり前すぎて、だれも口にしなくなりました。離婚率の増加、学校内での生徒間のいじめや先生同士のいじめ、児童虐待、夫婦や恋人間のDVなど、日本には数多くの問題が山積み状態です。今後、外国人労働者や痴呆老人の増加に伴った新たな課題も深刻化してくることでしょう。身体的・精神的、あるいは経済的に厳しい状況に陥る人が増加しており、それに伴って、社会福祉士のニーズは高まっています。
年間1万人以上!増え続ける社会福祉士
社会福祉士とは、社会福祉のスペシャリストで、日常的に生活していく上で様々な困難や課題を抱えた人々を幅広く援助し、助言、指導、福祉サービスを提供します。厚生労働省の統計によると、平成30年現在、社会福祉士の資格保有者数はおよそ23万人。年間1万人以上というハイペースで増え続けており、直近10年間で倍増しています。そんなハイペースで増えると、人余りになるのでは?との声も聞かれそうですが、社会福祉士が増えすぎているというわけではありません。供給と同じくらいのスピードで需要が増え続けている結果、需給バランスが取れているのが現状です。また、社会福祉士の資格には、更新制度がなく、一度取得すると一生ものの国家資格となります。合格率30%前後と福祉系の国家資格では難関といえるでしょう。
あらゆる施設から引っ張りだこの社会福祉士
社会福祉士は分野を問わず、高齢者介護、障碍者支援、児童福祉、生活保護などのあらゆる社会福祉サービスを担当しています。そのため、社会福祉士には、福祉施設、医療施設、行政施設など、さまざまな種類の施設から幅広い求人があり、社会福祉士という国家資格があれば、少なくとも働き口に困ることはないというのが実情です。職場ごとにどのような仕事をしているか見てみましょう。
高齢者施設の窓口として働く社会福祉士
社会福祉士の需要が最も大きいのは、特別養護老人ホーム、デイサービスセンターや介護老人保健施設などの高齢者施設です。社会福祉士は「生活相談員」として施設で働いています。施設の窓口として家族や福祉行政の間に立ち、高齢者の方が安心した生活を送れるように支援するのが仕事で、各種相談や援助、ケアプランの作成と実施、関係機関との連絡・調整、地域住民との橋渡し役、実習やボランティアの受け入れなども行います。利用者の施設における不満や将来の不安についても相談に応じます。
患者に寄り添う医療ソーシャルワーカー
大きな病院へ行くと、「地域医療相談室」「地域医療連携室」と書かれた看板を見たことはありませんか?そこで社会福祉士は医療ソーシャルワーカー(MSW)として働いています。医療ソーシャルワーカーとは、医療機関で、病気になった患者や家族の経済的・心理的な悩みや課題をサポートするのが仕事です。「入院費や通院費の支払いの不安」「退院後への生活の不安」などに対して医療的・社会的な制度の活用方法の提案をはじめ、入・退院の調整、自宅の環境整備にかかる助成金や福祉補助の申請手続きのアドバイスなどを行います。
患者に合った老人ホームを紹介したり、入所の調整も仕事の範囲で、退院時の面談やカンファレンスを行い、入所施設へ患者の状態を伝え、患者が問題なく生活できるように支援します。さらに、家庭内暴力や児童虐待、DVを受けた患者を発見した場合、警察や行政、学校などの関係機関と連携する役割を担っているのも社会福祉士です。
設置が義務付けられている「地域包括支援センター」
「地域包括支援センター」は、介護・医療・福祉などの分野から高齢者の方を総合的に支える相談窓口です。社会福祉士の設置が義務付けられている唯一の福祉機関で、介護サービスの手続き、介護サービスの事業所の紹介など、介護サービスに関する最初の入り口であるとともに、高齢者虐待や成年後見人の活用といった高齢者の権利を守る場所でもあります。お年寄りが住み慣れた地域で生活できるように、日常生活支援や介護予防などの相談に応じ、要介護認定の申請も行います。平成30年4月現在、すべての市町村に1か所以上、全国に5,079か所設置されています。
成年後見人として独立する社会福祉士も
今後ますます必要になってくる制度が、成年後見制度です。成年後見人とは、認知症などにより判断能力が不十分な高齢者の方、障碍者などに対して、金銭管理や契約といった法律行為をサポートする人を選ぶ制度です。社会福祉士は、「後見人」として高齢者のの方の補助や代理行為を行います。選任は家庭裁判所が決定し、「後見人」は家庭裁判所が決めた報酬を受け取ることができます。社会福祉士の中には独立開業し、身寄りのない高齢者の方や障碍者の財産を守る「後見人」として働く人もいます。社会福祉士の仕事は現在進行形で、発展途上の段階です。社会福祉士の活躍の場は、既存の分野だけでなく、ニーズに合わせた形で拡大していきそうです。
スクールソーシャルワーカーは生徒と向き合う
小学校や中学校といった教育施設では、いじめや不登校などの問題に対応するため、社会福祉士が「スクールソーシャルワーカー(SSW)」として活躍しています。いじめや不登校、児童虐待など、児童生徒、教員を取り巻く問題が顕在化していることから、教育知識に加えて社会福祉などの知識・技術を有するスクールソーシャルワーカーが求められています。「社会福祉士 求人」とネットで入力すると、スクールソーシャルワーカーの求人が多数出てくることから、教育現場でのニーズが高まっていることが伺えます。スクールソーシャルワーカーは、地方自治体の教育委員会が公募しており、私立学校でも採用しているところがあります。応募資格としては、社会福祉士か精神保健福祉士の資格が必要となります。よく似た言葉で、スクールカウンセラーという仕事がありますが、スクールカウンセラーは、児童生徒の心の問題に向き合うのに対し、スクールソーシャルワーカーはその子を取り巻く環境で起きている問題に向き合います。いじめや不登校の問題をはじめ、障害や精神疾患を抱える児童生徒の問題、児童虐待の問題など、学校や子供たちの悩みに対応するため、ますます必要とされる仕事となっています。
再犯防止に活躍する司法ソーシャルワーカー
少年院や刑務所といった施設では、非行少年や犯罪者の再犯を防ぎ、社会復帰させるため、「刑事司法ソーシャルワーカー」として働く社会福祉士がいます。最近注目を集めている仕事で、養成講座が全国各地で開催されています。超高齢社会の中で、法律知識がなく、十分な支援が受けられていない人が急増しており、社会福祉と法律の双方の知識をもち、社会的弱者の立場から考えられる人材が一層求められています。
社会福祉士の将来性は可能性を秘めている
社会福祉士は、必要とされる分野や役割に応じて、「〇〇ソーシャルワーカー」など名前を変化させながら、社会の至る所で悩みや不安を抱える人に手を差し伸べています。将来性は未知数で、多くの可能性を秘めている仕事といえるのはないでしょうか。社会福祉士は、保有するスキルや知識によって、個人差が生じる職業で、キャリアの豊富な人材ほど優遇される傾向にあります。社会福祉士としての実務経験を積みながら、関連資格を取得し、人間的魅力を高めることで、活躍の場はますます広がることでしょう。
名前:深井紀美子
プロフィール: 獨協大学外国語学部、金沢大学法学部卒業。北國・富山新聞社で記者として約10年間勤務した後、司法試験受験生、専門学校・職業訓練校講師、プロ家庭教師として働く。3年前からフリーランスのライターとして活動を再開。教育や医療福祉、仮想通貨、株投資など多方面で執筆中。趣味は水泳、猫と遊ぶこと。