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個室ベッドで眠る高齢入所者をAIカメラが見守る。介護職員は常にタブレット端末を持ち歩き、入所者の水分摂取や食事・排泄といった記録をその場で入力。入所者が起き上がると、カメラが動きを察知して、アラームで職員に異変を知らせる―。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)、ロボットが、介護現場で職員の負担を軽減するものとして期待されています。石川県小松市の特別養護老人ホーム「自生園」でAIなどが導入されてから半年。「きつい」「汚い」「危険」の3K職場の代名詞といわれた介護の現場はもはや昔のこと。未来の介護現場を先取りした「自生園」には他の福祉施設、地方自治体からの問い合わせや見学希望が相次いでいます。最先端の介護現場を紹介します。

見学希望や問い合わせが相次ぐ最先端の介護現場とは

石川県小松市の特別養護老人ホーム「自生園」は、昭和60年に事業を開始、要介護3~5に認定された100人ほどが入所し、介護職員は約40人。昨年夏に石川県のモデル事業に選ばれ、AIカメラ2台と心拍数や呼吸数、血圧などを介護記録に自動的に反映するバイタル測定機器、見守り介護ロボット5台、タブレットなどを導入しました。現場スタッフが中心となって、介護ロボットやタブレットのよりよい使い方や実用性を検証しています。

可視化で介護サービスの品質向上を図る

「介護サービスは形に残らないが、可視化することで、事故が起こったときに家族に映像を見せて説明できます。見える化が大切です」と話すのは今井要施設長です。見守り介護ロボットは、ベッドの下に引くシート状のもので、脈拍や呼吸数を測定し、自動的にタブレットに表示されます。入所者が転倒し怪我をした場合、いくら詳細な介護記録を見せて説明したとしても、家族は納得しないかもしれません。タブレットには、映像を残す履歴機能もあるため、転倒した瞬間を記録として残すことができます。

行動パターンのデータを蓄積した後、人の手に移行

「自生園」のロボットは、特定の入所者のベッドに設置されたままではありません。何時ごろに起きて、食事を取り、歩き回るかといった行動パターンのデータがある程度蓄積され、入所者の特性が把握できるようになるとロボットを外し、人の手による介護に移行します。シートを取り外せない入所者、例えば看取り介護の方は、脈拍や呼吸数などを常に見守らなければいけないため、継続して使用しています。見守り介護ロボットを活用することで、家族が死の瞬間に立ち会える確率が高くなりました。

転倒リスクが減少、立ち上がる前にアラームが鳴る

転倒のリスクも減少しました。入所者がベッドから起き上がると、タブレットにはシルエットの映像が映し出されます。入所者の動きを予知し、床に足を着ける前に知らせてくれます。ベッドに座る、起き上がる、お尻が浮く、立ち上がるといった行動ごとに、違った音のアラームが鳴り、タブレットに知らせてくれます。画面を見なくても、音で把握できるため、他の入所者のケアをしている時でも、今どの段階なのかが分かるようになっています。

緊急度や優先順位の判断ができない欠点を克服

これまでは床にセンサーがあり、足が着いた時点でアラームが鳴るというタイプが一般的でしたが、アラームが鳴った後に部屋に駆けつけても、歩くのが速い方だと間に合わない、という欠点がありました。また部屋へ行かなければ、確認できなかったため、同時に複数の通知があったとしても、緊急度や優先順位の判断ができませんでした。さらに何度も部屋を訪れることが、利用者・介護者ともにストレスになってしまう、という点が問題となっていました。

あらかじめ確認できるため精神的負担が軽減

タブレットでは、通知の前後の画像や動画を確認できるため、急いで駆けつける必要はありません。部屋を訪れる必要性の有無をスタッフルームであらかじめ映像で確認した上で、訪れるため、職員の精神的負担が少なくなりました。これまでは転倒事故の結果しか分からなかったのですが、どんなふうに立ち上がり、どんなふうにバランスを崩して転倒したかなど、事故前後の映像履歴を確認できるようになっています。蓄積した生活データを確認することで、事故の原因を突き止めたり、対応策を立てやすくなりました。

改善点を報告し、AIやIoT機器の使い方を発信

「自生園」ではAIやロボット、IoT機器の使い方は現場の介護職員に任されています。自由な発想で使用した上で2週間に1度、改善点や使用した成果を施設長に報告しています。利用者の行動パターンや生活データを蓄積し、そのデータを活用することで、ケアプランの改善や介護の質の向上にもつながります。AIやIoT機器を導入したことにより、どのように業務が改善されたか、介護職員の精神的・肉体的負担が減ったかなどを県内外の施設や行政などに発信していく予定です。

きつくて煩雑な事務処理はリアルタイムで記録

介護の仕事で一番煩雑と言われているのが「介護記録」を書くことです。業務が終わってから介護記録を書いたり、キーボードで入力することも多く、記録をつけることに多くの時間を取られてしまい「きつい」「大変」と思う方もいるのではないでしょうか。入所者の状態は日々変化しています。1人の人が24時間365日介護するわけではありません。多くの介護スタッフが入れ替わりに介護します。介護を組織的に行い、一貫性を保ったケアをするために、「介護記録」を正しく記入し、スタッフ同士の情報共有を図ることが最も大切になります。

タブレットを持ち歩く、その場で記録

事務処理手続きの煩雑さで悩んでいたのは、「自生園」の職員も同じでした。AIを導入して一番楽になったのは記録書類の作成などの事務処理です。「自生園」の職員は勤務中、常にウエストポーチにタブレットを入れて持ち歩いています。水分の摂取、食事をどれだけ残したか、排泄の回数などの介護記録を、リアルタイムで入力しています。毎日行わなければならないことを入所者ごとにスケジュール管理し、やるべきことを行った場合はタブレットをタッチし、色を塗ります。「みえる化」の一つで、色が塗られていないと、まだ行っていないということが明らかに分かります。データの重複記入もなくなりました。タブレットで入力した情報はサーバーに蓄積され、各棟に設置しているパソコンで職員全員が見ることができ、情報の共有もできるようになりました。

 

夜勤の精神的ストレスも軽減

介護職員の業務の中で、心身ともに負担になるのは「夜勤業務」です。夜勤に配置されている介護職員は日勤と比べるとはるかに少なく、一人で20人以上の利用者を見なければならないケースもあります。夜勤だから、かかる手間は少ないということはなく、昼夜逆転の利用者の対応などに追われることもしばしばです。さらに夜間に転倒事故が発生するリスクも大きいことから、ストレスは相当大きくなるといえるでしょう。

事前の確認で部屋を訪れる回数が激減

「自生園」の夜勤体制は5人。AIや見守りロボットを導入してから、精神的負担が軽減されたようです。男性スタッフは「これまでアラームが鳴ると必ず部屋を訪れていたのですが、タブレットで事前に確認できるようになり、部屋を訪れる回数は10回から3回になりました」と教えてくれました。また、赤外線センサーの付いた体温計は、おでこにたった2秒当てるだけで体温を測ることができ、記録も自動的に反映されるため、寝ている入所者を起こすこともなくなりました。血圧や心拍数のデータも測定後自動的に入力されます。

10年先を見据えた介護で2025年問題を解決

厚生労働省によると、団塊の世代が75歳を超える2025年には、高齢化率は30%以上となり、認知症の人は700万人を超えると推計され、介護人材は30万人以上不足するといわれています。2025年問題が間近に迫り、「自生園」は10年先を見据えた介護に取り組んでいます。介護職員の負担を軽減し、離職率の低下を目的にAIを導入した「未来の介護現場」はこれからますます注目を集めることでしょう。

<執筆者のプロフィール>
名前:深井紀美子
プロフィール: 獨協大学外国語学部、金沢大学法学部卒業。北國・富山新聞社で記者として約10年間勤務した後、司法試験受験生、専門学校・職業訓練校講師、プロ家庭教師として働く。3年前からフリーランスのライターとして活動を再開。教育や医療福祉、仮想通貨、株投資など多方面で執筆中。趣味は水泳、猫と遊ぶこと。
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