みなさんは、介護業界のアイドルとしてテレビや新聞など多くのメディアに取り上げられ注目されている“ごぼう先生”こと簗瀬寛さんをご存知だろうか。全国でイス体操や口腔体操などの介護体操を行っており、自身の本やDVDも出しているシニアの人気者!
そして、なんとあのZOZOTOWN前澤友作社長が企画した100人に各100万円プレゼンとするという「総額1億円キャンペーン」の当選者にも選ばれた強運の持ち主でもあります!
今回は、そんなごぼう先生の意外な経歴や、代名詞である健康体操へのこだわり、介護業界への思いを語ってもらいました。
目次
ごぼう先生とは
ごぼう先生の活動内容
ごぼう先生は、全国各地で健康体操を行っている。ごぼう先生の健康体操DVDは全国500施設以上で活用され、累計販売数は驚愕の10,000枚突破。「シニアの体操のお兄さん」として活動する傍ら、地域の介護予防意識を高める出張講座や介護職員のモチベーション向上を目的とする講師活動など幅広く活躍をしている。
ごぼう先生の意外!?な経歴
ごぼう先生誕生の秘密は、スポーツに夢中だった学生時代にまで遡る。
(ごぼう先生)学生時代はスポーツが大好きで、中学生までサッカー、高校生からは本格的にボクシングを始めました。ボクシングは、高校のインターハイにも出場しました。
―インターハイですか!凄いですね。
(ごぼう先生)ありがとうございます。ボクシングの試合で立つリングは、ある意味ステージのような空間で、沢山の視線やプレッシャーの中で凄く緊張しました。しかしその分楽しくもあり、ずっと続けて行きたいと感じるほどでした。
しかしそんな時、アクシデントが起きてしまって...。腰を痛めてしまい、ボクシングを続けるのが難しい状態になってしまったのです。
―そうだったんですね。
(ごぼう先生)ずっとボクシングを続けることはできませんでしたが、沢山学ぶことがありました。例えば一人の力だけでは強くなることはできないこと。私がインターハイに進むことができたのは、部活の先生や、身体をサポートしてくださったトレーナー、応援してくれた家族がいたからこそ。そのような経験から、人と関わる仕事に就きたいという想いがあり、鍼灸師の国家資格を取得しました。そして24歳の時に、やなせ訪問鍼灸事業として独立を決意しました。
―24歳という若さでの独立に不安はありませんでしたか?
(ごぼう先生)むしろ「どんどんやっちゃおう!」という考えでしたね。元々、0から1を創ることが好きな方だと思います。自分で名刺やチラシを作製して営業に回ったり、自分自身で考えて創って行動することが楽しかったですね。
そしてその頃、地元には介護事業所が増え始めていました。介護施設に鍼灸師として治療に伺ったことが、私と介護との出会いのきっかけでした。
最初にデイサービスを見学したのですが、雰囲気がとても明るくてびっくりしました。スタッフの皆様、ご利用者の方々もお互いに笑顔があったのです。私が想像していた介護のイメージとのギャップに衝撃を受けましたね。
そこで介護に興味を持ち、日本福祉大学に通信制で通い、社会福祉主事の資格を取得して生活相談員として働き始めました。
『ごぼう先生』の名前の由来
そもそもなぜ「ごぼう先生」という名前なの?と思った方も多いのではないでしょうか。ごぼう先生の名前の由来をお伺いしました。
日常生活の中でも、名前を覚える、覚えてもらうっていうことは、すごくハードルの高いことだという考えがあって。「もっと覚えて頂きやすい名前はないかな」と考えていた頃に、妻から「なんか、見た目がごぼうみたいだよね(笑)」と言われたんです。また当時、鍼灸師として患者様達から“先生”と呼んでいただくこともあったので、「ごぼう先生」という名前を思い付きました。楽しく覚えてもらいたいという気持ちで、自分でもとても気に入っています。
あと、ここからは実は、後付にはなるんですけど(笑)ごぼう先生=「介護予防」介ご予ぼうの“ごぼう”だね!なんてスタッフ達の力を借りて、名前に意味を持たせることもできたのです。妻や仲間の力を借りてつけた名前でもあるので、ごぼう先生という名前が定着して、更に体操とセットで覚えて頂き始めたことが、すごく嬉しいです。
ごぼう先生の体操の秘密
介護体操が生まれるまで
「まずはみんなが簡単に始められることから始めよう!」と思ったことがきっかけでした。もちろん最初はすごく難しかったです。身体を動かすことが出来ない人もいる中で、「動かしましょう!」なんて簡単に言っていいのだろうか、どうお伝えしたら良いだろうかと葛藤がありました。
試行錯誤を繰り返し、自分自身で新聞紙やテープを使って体操用の道具を作ってみたりして。でも、そんな葛藤していた頃の自分の行動でよかったなと感じているのは、自分が体操する動画を撮影して、改善点を探していたこと。自分の動きのぎこちなさ、口癖など、治さなければいけない点に、自分で気付くことができたのです。
「心のお土産」をお渡ししたい
ごぼう先生が、人を魅了するプロとして参考にしているのは、綾小路きみまろさんや、教育番組のお兄さんお姉さんだという。目指すにはとてもハードルの高い方達だったが、あえて高い目標を掲げて、彼らを目指して取り組んできたそうだ。そんなごぼう先生が大切にしていることは何かお伺いしてみた。
一番大切にしていることは、“同じ空間にいるからこそ感じて頂けるような楽しさや嬉しさを届けること”ですね。誰しも限られた時間の中で生きていますから、高齢者の方達の貴重な時間を少しでも楽しいものにしたいです。身体を動かすという実践的な思い出ももちろんですけど、心のお土産をお渡しできたら一番嬉しいです。
―一時的なものではなく、心に残る楽しい思い出は、何度思い出しても元気になれますもんね。体操のプログラムはどのように決めていらっしゃるのですか?
基本的に、アドリブで対応しています。でないと、逆に盛り上がらないんですよ。会場には、年齢も身体の動かせる範囲も全然違う方たちがいます。広く全体を見渡せるようになってからは、少し動きが遅い方には声をかけながらすすめることで、確実に全体の満足度があがっていると実感できるようになりました。身体を動かすことで、今まで見ることの出来なかった表情や、発言が出たりすると、凄く嬉しいと感じます。
―体操によって新しい何かが生まれたなあと実感した経験はありますか?
デイサービスで腕を使って、クッションの押し合いの運動をしていた時なんですけど。身体の右側がマヒしているAさんと、左側が麻痺しているBさんがいらっしゃって。お二人が、こそこそと何か楽しそうにお話しているなと思ったら、「私達は二人で一人だから」とそれぞれの使える腕で、力を合わせてぐうっとクッションを押してくれたんです。体操がきっかけで、お二人が仲良くなって、楽しい思い付きをしてくれたことが凄く嬉しくて。忘れられない経験ですね。
明るい高齢化社会のために、僕たちができること
高齢者の方のサポートの方法を知るには、まずは、この本を読んでください!(笑)っていうのは冗談で。僕からは2つお伝えしたいです。
心に余裕をもつこと
介護の仕事に関わらず、仕事がハードだとどうしても余裕がなくなるものです。自分の心に余裕がないと、入居者様にもこちらの気持ちが伝わってしまいますからね。誰かと悩みを共有したり、リフレッシュの時間も大切だと思います。
僕のリフレッシュタイムは、子供との時間です。あとは漫画を読んだり、隙間時間に趣味の時間をつくったりしていますよ。人の生活に関わるお仕事ですから、心が通うことを大切にしたいと思っています。心に余裕を持っていれば、きっと自分だけでは想いつかなかったような、新たな発見や学びが出来るんじゃないかなと思います。
みんなで、老いを受け入れる
人は誰しも年齢を重ねて老いて行くことは当たり前のことですよね。でも、高齢者の方の中には、何かが出来なくなってしまい、老いを感じた時に、「ポキッ」と心が折れてしまう方もいます。実際に僕の祖母がそうで、家からでなくなってしまったんです。
「周りに迷惑をかけたくない、情けない」と思ってしまったのかもしれません。僕自身も、自分や親が老いることってなかなかイメージ出来ないですし、その気持ちもよく分かるんです。でも、年齢を重ねるのは自然なことですから“老い”と上手に付き合っていくことを大切にしてほしいと思います。なぜかというと、老いを受け入れている方たちって、すごく幸せそうなんですよ。人生の楽しみ上手で、とてもチャーミングだと感じます。ご家族や周りの方にも同じようにみんなで年齢を重ねることを受け入れてあげて欲しいと思います。もちろん、家族間だと葛藤もあると思います。そんな時こそ、第三者である介護サービスを上手く利用して頂けたらと思いますね。
ごぼう先生の挑戦が、介護業界を明るくする
―ごぼう先生にとって、介護体操とは?
体操は、ひとつのコミュニケーションの手段で、元気になれれば体操でなくても良いと思うんです。ひらめきやアイディアなどの柔軟な発想を大切にすることで、利用者様にも新しい何かが生まれたらそれは凄く素敵なことですよね。
実は最近、本の執筆という僕にとって新しい挑戦をしました。周りの方の力もお借りしながら、自分自身の成長にも繋がっていると実感しています。そして、読者の方に何か届けられたらという想いを形に出来て凄く嬉しいです。新しいことに挑戦すると、もちろん失敗することもあります。でも、何かしら挑戦してみないと、介護業界を明るくすることは出来ないですからね。
編集者が伝えたい!ごぼう先生の魅力
第一印象は“爽やか”そのもの!フレンドリーなお人柄でありながら、介護業界について語る目には内に秘めた熱い想いを感じさせられた。「介護業界を明るく」という目標に向かって、ごぼう先生が本気で向き合っている姿が印象的だ。そして、実際に体操イベントにも参加させて頂き、ごぼう先生のパワーを肌で感じることができた。小さなお子様からご高齢の方まで、あっという間にごぼう先生の空間に引き込み、その場にいる全員が伸び伸びと楽しそうに大きく手を上げたり、声を出したりする体操に取り組んでいた。
体操自体が分かりやすく工夫されていることはもちろん、それぞれの身体能力や、できる範囲が違っても、ごぼう先生の持つ広い視野と細かな心遣いで全員が楽しむことが出来ていることに驚いた。それは、ごぼう先生の豊富な経験や努力があってこそだが、「会場にいる人を楽しませたい!一人ひとりを元気にしたい!」という想いが、皆さんにも伝わっているからではないかと感じた。
ごぼう先生から学んだのは、自己満足ではなく常に相手目線に立って想いを伝えるということの大切さだ。介護の仕事でも他の仕事でも、日常生活で自分の出来る範囲や、自分の考えを中心に物事を考えてしまいがちだが、十人十色の形があり、それぞれの人だからこそ生まれる化学反応を楽しむ!そんな優しくポジティヴな心意気を感じた。
1985年愛知県生まれ/ごぼう先生こと簗瀬寛/鍼灸師/社会福祉主事/障害者スポーツ指導員(初級)/介護予防の「大人のための体操のお兄さん」として全国で健康体操を広めている/趣味はボクシングでインターハイや国体出場経験もあるほどの実力者!
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