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【女性×介護】をテーマに、過去~現在を知り、未来を創造する対談。今回は、介護の現場から教員の道へ進まれた浦和大学短期大学部 特任教授の青柳佳子先生にお話を聞いてきました。

学生時代の何気ない選択が、生涯の仕事になるまで。

— 介護の現場からスタートし、現在は大学教授になられた青柳先生。まずは簡単なご経歴からお伺いできますか。
 福祉系の短大を卒業してから、特別養護老人ホームで約12年間、介護職として働いていました。その後、介護福祉士の養成教員になりました。

最初は、専門学校の教員として7年間働いていましたが、教員要件が変更となりました。介護教員講習会の受講が必要となり、教員のまま講習会を受講するのは無理だったので、専門学校を退職して介護教員講習会を受講しました。その後、大妻女子大学で実習担当助教として5年間勤務し、目白大学短期大学部を経て、現在の浦和大学短期大学部での現職に就きました。ちょうど3年目になります。

— 福祉系の短大に進学された経緯を考えると、学生時代からその道に興味があったということでしょうか?
 正直な話、真剣に考えて決めた道ではありませんでした。動機は単純で、高校を卒業してすぐに働きたくなかったから。働かないとなると勉強しなければいけませんよね。

でも、4年間勉強するのは嫌でね(笑)だから、短大へ進学することを決めました。進学先を決めるときに、卒業後の進路についても考えましたが、椅子に座って仕事をするのは私には向いていないし、身体を動かしていることが好きだったので、何か仕事に活かせないかなと思って色々と調べ、見つけたのが介護職だったという経緯です。そこで『福祉系の短大への進学』という道筋が決まりました。

 — そうだったんですね。でも、当時の選択が今に繋がっているから不思議ですね。実際に福祉を学んでみて、いかがでしたか?
短大のときの実習で、介護職として働こうと決めたのは今でも覚えています。様々な介助や夜勤などを経験させてもらい、実習が終わるころには「施設で働こう」と決意していました。

『心ある介護福祉士を育てていきたい』そんな想いを胸に、介護職から教職の道へ。

— 現場から教育への道に進もうと思ったきっかけは、何ですか?
 私が働いていた特養では、定期的に実習生を受け入れていました。受け入れ時には、必ず巡回指導の先生が施設を訪ねてきます。その先生と学生の関係性を間近で見ていて、素直に「あ、いいな」って思いました。

介護職を意識し始めたのもその時でしたね。当時、私は介護主任だったので実習生の教育にも力を入れていました。また、働いていた施設の介護も少しずつ良くなってきていたことを実感していました。でも、ふと思ったんです。

「自分が働いているところだけ良くなっても、介護業界全体が変わるわけではない。でも、介護の勉強をしている学生が心ある介護福祉士に育っていけば、それぞれの就職先の介護が良くなり、介護業界全体が良くなるかもしれない」と。自分に力があるのかどうかも考えずに教員になって、今があります。

— 青柳先生自身は”先生”という立場に対して、憧れの気持ちなどはありましたか?
 憧れは一切ありません(笑)そもそも、学校の先生という存在をあまり良く思っていませんでした。でも、現場での体験から先生に対するイメージが少し変わりました。

実習生を受け入れていると、巡回の先生が来ることは先程お伝えしましたね。いつも同じ巡回の先生が来ていたのですが、ある時、その先生が辞めることになりました。代わりに別の先生が巡回に来たのですが、その時受け入れていた実習生が「なんで、〇〇先生は辞めるの?」と代わりに来た先生に詰め寄ったんです。

これはマズいなと感じたので、学生が納得いくまで先生から話を聞けるように場を設けました。最終的には実習生も納得したようでしたが、そのとき「こんなにも学生に慕われる先生がいたんだ、学生が先生を心配してくれるほどの関係性を築けるんだ」と驚きました。

 — その先生の人間性や、影響力は凄いですね。お話をお伺いしている限りでは、特養でのご経験が青柳先生の『今』を形成する上でとても重要な位置づけだったんですね。ちなみに特養では、どのようなキャリアを築かれたのでしょうか?また、女性が多い職場でしたか?
 私のキャリアは、最終的に介護主任でした。そして、職場のほとんどが女性でしたね。

就職した当時は男性職員の人数は少なかったのですが、男性の力の必要性を感じて私が退職する頃には就職時よりも男性職員の数は増えてはいましたが、それでも女性の方が多い職場でした。施設長や生活相談員だと男性が多かった印象ですが、介護主任などの役職には女性がついていることが多かったような気がします。

 — そもそも、この業界で働く女性が多いのは何故なのでしょうか?
正直分かりません。でも、やっぱり介護の成り立ちに深く影響していると思います。昔は、お嫁さんがお舅さんやお姑さんの面倒を見ることが当たり前でした。

看護師も今でこそ看護婦という呼び方をしなくなりましたが、「婦」という漢字があてはめられていたのは、女性の仕事だったからですよね。保育士も、昔は保母さんと呼んでいました。子供もお年寄りも、その面倒を見るのは母親だったり、お嫁さんだったり皆女性。だから、人の世話をする看護や介護は女性の仕事として位置づけられ、今も女性が多いのだと思います。

また、高齢者施設の場合、利用者さんも女性が多いので、同性介護の方が何かといいと思います。でも、男性の力を借りたいときもあるし、男性の利用者さんもいますから、男性職員も必要だと思います。

 — この業界に、もっと男性を増やすべきだと思いますか?
あくまで個人的な感覚ですが、増やしたとしても男女比は半々が限度だと思います。その理由は、女性の方が細やかな部分に気づく能力に長けていると思うので、現場で必要になる気配り・心配りの点で女性の力が必要だと感じているからです。

男性にとっては少し失礼な言い方に思えるかもしれませんが、女性は生活のなかで家事を担うことが多く、地域の人と接する機会も多いと思います。何気ない家事の一つひとつは家族のためであり、食事や洗濯、掃除など家族が気持ちよく生活できるように、日常の中で気配り・心配りをしています。

また、来客があればおもてなしをして、地域の人たちとも関わりをもって、こういった生活のなかでの経験は、介護を行っていくうえでも必要になるものだと思います。また、いくら男女平等といっても、まだ日本では家族を支えるために中心となって働くのは男性だという考えも根強くあります。女性は、結婚すれば出産・子育てと、どうしても仕事を離れなければならない時期もあります。

一家の大黒柱である男性には、キャリアを積んでもらい、介護職から介護職のリーダーへ、そして中間管理職、施設長などという道筋を進んでもらいたい。もちろん、女性にもそのような道を進んでもらいたいと思っていますが…。青柳佳子さん

解決することよりも重要な、介護従事者の意識改革とは

— 確かにそうですね。介護サービスを提供する側の課題は何か感じられますか?
今は教育現場にいるので、直接的に介護の現場に係わる機会は圧倒的に減りましたが、経営する側の介護に対する理解不足を感じるときがあります。

社会的に必要とされる事業だからと始めても、専門的知識もそれほど必要なく、高齢者のお世話ができればよいと考えている事業者も多いのではないかと。だから、働き方や教育の体制が整っていなかったり、実際に働いている介護職の方の意識改革ができていないことがあるような気がします。介護職は専門職であり、プロフェッショナルなはずです。

— そうですよね。施設にも様々な職種の方がいらっしゃるかと思いますが、その中での介護職の方の働きづらさなどはありますか?

仕事内容や職種で優劣をつけるべきではないことを承知でお話ししますが、私が思うに、介護職の方は他の専門職に比べて立場が下という認識でいる気がします。

看護師や生活相談員、リハビリ職の方が介護福祉士より立場が上というような意識がある。私はそうは思いません。先程お伝えした通り、介護は専門職でありプロフェッショナルです。介護のプロとしての立場で考え、意見もするべきだし、他の専門職の人たちは同じ立ち位置で話をするべき。

介護職が利用者の生活を支える一番大切な存在だと思います。自分の仕事に劣等感を持ち、誰からも認めてもらえないと蔑ろにされて疲弊して離職してしまうことも起こりうる。この意識が課題だとも思いますね。

—介護の仕事に自信を失ってしまう方もいらっしゃるのでしょうか?
そういった瞬間もあるかもしれません。でも、そういうときこそ上司が「介護職は専門性のある仕事だ」ということを教えてあげるべきだと思います。

以前、学生に対して「介護職とそれ以外の職種(看護師等々)との関係性を図に表してみて」と問いかけたことがありました。驚いたことに、ほとんどの学生は看護師の下のラインに介護職を示しました。介護実習を何回か行い、現場の様子を知っている学生が、このような図を示したことは残念でした。

介護職と看護職は同じラインであるべき。そして、介護職と看護職にそれぞれ管理職がいるならば、その人たちも同様のラインです。横並びの連携があってこそ、利用者さんの生活を支えることができる。私はそう思っていますが、そう思われていない現実がある。

確かに現場の雰囲気や、目に見える専門知識の有無が影響していることは事実です。医療行為は「誰もができるものではない」ことが分かりやすく、対応できるのは看護師です。一方、介護職が行うのは「食事の介助」「排泄の介助」「入浴の介助」など、誰もが行っている日常生活の支援です。

そこに専門性があるのは分かりづらいのだと思います。介護職の専門性が曖昧になってしまっていることは、私たち研究者の責任でもありますが、この専門性の曖昧さが介護福祉士の立場が適切に認識されていない原因の1つだと思います。現場での教育も徹底しなければ、意識改革の糸口は見つけることができないでしょう。

 — 青柳先生から学んでいる生徒さんは、きっとこうした意識をしっかり持たれているんでしょうね。正しい知識を身に付けて社会に飛び立ってほしいなと思いました。
残念ながら、私自身が介護職のプロ意識について、本大学で講義をしたことはないので伝わっているかは分かりません(笑)でも、介護の業界で頑張っていくには、しっかりした意識を持っていないと難しいと思います。

— 確かにその通りだと思います。介護現場の課題は、人手不足や離職率の高さだけではなく、組織としての改革が求められますね。ちなみに、介護を受ける側の課題について考えてことはありますか?

ほとんどありませんね。しいて言えば、「お世話になって、申し訳ない」という気持ちは持たなくていいと思います。介護職はボランティアではなく、れっきとした仕事として、プロとして接しているので。

— 私も介護を受ける立場であれば「申し訳ない」という気持ちをもってしまうかもしれないです。
ある高校を対象に、介護のイメージ調査を実施した研究報告があります。その報告によると、介護というテーマについて、どんな機会で知ったのかというアンケート項目には、テレビと回答している高校生がほとんどでした。

そして残念ですが、介護業界のイメージはとても悪いという結果も出ていました。メディアの発信する情報は、良い意味でも悪い意味でも影響が大きいと思います。メディアに頼ることは難しいので、もっと別の方法で悪いイメージを払拭するための取り組みが必要だと感じています。

この業界のことを知らないからこそ、メディアの情報を鵜呑みにしてしまうのだと思うので、例えば中学生や高校1・2年生などの進路を考えていく年代の人たち向けに、介護体験セミナーのようなイベントをもっともっと増やしていくのはどうかなと思っています。正しい情報をしっかりと伝えたいという気持ちが強いですね。

 — 介護の体験型のセミナーなどは、子供の頃から教育の一環として取り入れることで、様々な誤解や偏ったイメージ持つことを防ぐことができるかもしれないですね。
そうですね、自分の目で見て体験することにより、少しずつですがマイナスイメージはなくなっていくかもしれないと、私も思っています。

残念ながら報道されている内容が、どうしてもネガティブなことばかりです。認知症1つをとってみても、穏やかに過ごしている人も多くいるのにも関わらず、徘徊などの問題が注目されてしまう。

介護に至っては、事故や事件がより多く発信され、良い報道をされる機会の方が圧倒的に少ないのではないかと思います。先程お話しした研究報告では、中学校の時に何らかの介護体験をしたり、身内に介護関係の職場で働いている人がいる高校生は、介護に良いイメージを持っており、進路選択にも繋がっているという結果も出ています。

 —この業界のテーマになると、メディアはマイナスと捉えられるような内容を強調してを発信している印象ですね。最近は介護ロボットの導入や排泄予知ウェアラブルなどの開発も進んでいます。青柳先生は、介護業界へのIT技術参入をどうお考えでしょうか?
本大学でも、介護ロボットに関する公開講座を何回か開きましたが、実は私が介護ロボットに興味を持ちだしたのはつい最近です。

私には現場の感覚が強く残っているので、大きな機器を使うよりも、ビニール袋1枚あれば事足りると思っていたり(笑)でも、最近の福祉機器はよく考えられ、昔に比べて進化しているなと感じています。

どちらかというと、「介護は人の手で」という感覚が強かった私ですが、介護ロボットを開発・普及している企業の方々のお話を聞いたり、実際に体験してみると、今まで見えていなかったものが見えてきて、福祉機器を有効に活用することも大切だと考えるようになりました。

介護ロボットは価格が高いのがネックですが、補助金などを活用しながら導入していくことで、介護負担の軽減につながるのではないかと思います。

編集後記

青柳先生は介護現場での豊富なご経験を活かし、その感覚を強く残しながら教壇に立っていらっしゃいます。

机上の空論を並べられるよりも実体験の方が、格段に心に響きますよね。私もこんな先生に出会っていたら人生が大きく変わっていたかもしれません。インタビューをさせていただいた日も、研究室には多くの生徒さんが青柳先生を訪ねてきました。

青柳先生だけではなく、浦和大学の先生方はじめ事務局の方も本当に穏やかで、キャンパスも大自然の中に広大に存在し、何度でも通いたくなるほど素敵な場所です。今回、こうしたご縁をいただき本当に幸せです。

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