訪問介護(ホームヘルパー)の仕事内容、メリットとデメリットとは

訪問介護(ホームヘルパー)は、介護が必要な高齢者の自宅に訪問し日常生活の援助を行います。ここでは、訪問介護の仕事内容や、メリット・デメリットをご紹介します。

訪問介護とは

訪問介護事業所で勤務する訪問介護員には介護業界では珍しく全職員に資格要件があり、初任者研修(旧ホームヘルパー2級)の修了が必要とされています。介護業界には様々な施設や事業形態が存在しますが、資格所持を必須とする訪問介護は独特な立ち位置であるといえます。

 

それは、訪問介護が原則的に一対一でサービスを提供するという特性を持っているためです。

 

一対一の環境でのサービス提供で事故の際には大きな責任が伴う点、いざという時の対応が必要な点、そして必ず資格を所持していなければ勤務できない点は、訪問介護の大きな特徴といえます。

訪問介護の仕事の内容

訪問介護の仕事の内容は多岐に渡り、極端な表現をすれば全ての生活上の行いを支援する必要があるといえるかもしれません。自宅で暮らす高齢者が今の暮らしを継続できるように支援を行うという性質上、入浴も排泄も調理も、食事介助も買い物も掃除も業務となりえます。

 

ケアプランに則った内容という原則があり、入浴はデイサービスで行うケースや買い物は家族が行うケース、調理は不要で都度総菜を購入してくるケースなど、それこそ利用者様の人数分だけケースが存在し、必要に応じた訪問介護のプランが作成されるのです。

 

サービスには身体介護と生活援助という分類があり、時間当たりの単位数が異なります。さらに時間の長さに応じて20分から45分の生活援助なら生活援助2、45分以上なら生活援助3と分類されています。

ここでは特に需要の多い買い物、掃除、調理をピックアップして、サービスの具体的な内容を紹介します。

買い物代行・同行

買い物の支援には生活援助として提供される買い物代行と身体介護として提供する買い物同行が存在します。

 

買物は歩行に困難がある場合に最初に必要になるサービスの一つです。買い物代行ではヘルパーが一人で、一般的には買い物の実施、帰宅して収納するまでをサービスとして提供します。

 

買い物先は一番近くの買い物施設で、日常生活上で必要な物品に限るとされています。
例えばですが、米や水など重たいものを頼まれた場合は、訪問介護員にとって負担が大きくなります。

買い物同行は文字通り利用者様の買い物への同行支援となります。

大きな違いとして、買い物の代行は生活援助、買い物の同行は身体介護となります。

また、代行が可能な買い物をわざわざ同行するからには何らかの理由がある場合がほとんどです。
例として「自身で品物を選ぶ楽しみを得る」「自身で支払いを行う過程で経済的な自立を実感する」「外出の機会を創出する」などが挙げられます。

歩行の見守りや車椅子介助などを実施しながら、利用者様の主体的な買い物活動に同行するサービスとなります。

掃除

掃除は腰痛などを理由に自身で行うことが難しくなりがちで、誰でも必要になるという点は買い物と共通です。 掃除は利用者様の専有部に限るとされており、かつ日常生活空間に限られています。

そのため、ご家族と同居の場合の風呂トイレやリビング、倉庫や庭の草刈りなどは原則的にサービス内容には含まれません。

施設型の事業所と異なり清掃用具は利用者様の自宅の物を使用するため、掃除機がなくホウキとチリトリを利用することもあれば、雑巾がけを求められることもあります。

身体に触れない介護なので原則的には生活援助に分類されます。

調理

調理は総菜や宅配弁当サービスなどで代用されることも多く、デイサービスなどで昼食が提供されることもあります。買い物や掃除に比べると利用者様自身で対応しやすい部分でもありますが、一日に2~3回毎日必要になる食事もサービスとしては割合の多い部分になります。

 

調理は利用者様の希望を聞きつつ実施され、調理器具や買い物の状況などによってサービス内容が特に千差万別になります。

 

ヘルパーの得手不得手の影響も大きい内容であり、調理が苦手な訪問介護員は利用者様からヘルパー交代を希望されることもあります。高齢者の生活において食事は貴重な楽しみの機会であり、それだけに利用者様の要望も多い業務になります。

調理は利用者様と一緒に見守りながら実施するということはないので、生活援助として提供されます。

 

その他の業務

その他の主な業務としては入浴や排泄介助が挙げられます。

 

入浴は毎日必須でないこと、自宅という環境に限らずサービスが提供できることからデイサービスや訪問入浴サービスを利用されるケースも多くあります。自宅のお風呂にゆっくり入りたいというニーズから訪問介護を希望されることも少なくありませんが、多くの日本住宅では湯船に浸かるために足を大きく上げる必要があるため、訪問介護のサービスとして一般的には割合は多くありません。

 

排泄は時間が予想しづらいため、訪問介護で提供される場合はオムツ交換の割合が多くなります。定時で一日数回のオムツ交換というサービスを訪問介護で提供すると利用限度額に達する場合が多く、在宅生活から施設入所を選ぶ決め手となりやすい部分でもあります。

 

全般的に身体介護のサービスは提供割合が少ないと考えて良いでしょう。

このように利用者様個々に合わせて必要なサービスがケアプランに記載され、それに合わせて実施されるのが訪問介護の仕事の特徴です。

 

施設のスケジュールに合わせて食事や入浴を提供する施設型の事業所とはサービス内容もサービス実施時の注意点も大きく異なるため難しくもありますが、そこが訪問介護ならではの部分でやりがいや魅力を感じる部分でもあります。

訪問介護のメリット・デメリット

次に訪問介護のやりがいや魅力、他の事業形態と比べてのメリットをご紹介します。

メリット1.利用者様との強い信頼関係が築ける

訪問介護で働くうえでの大きなやりがいを感じる場面として、利用者様と強い信頼関係を構築できる点を挙げたいと思います。

 

施設で働いていると次にすること、終わらせるべき業務が尽きるということはあまりありません。
ある利用者様の居室を清掃するために30分の時間を割り当てていたとしても、早めに終わったなら他の作業に移るべきだとされることが殆どでしょう。

 

しかし訪問介護では30分のサービスではその全てを利用者様の居室の掃除、利用者様との関わりに割り当てることが出来ます。

 

その関わりの中で昔の仕事の話や若いころの恋愛の話など取り留めのないことを話されることは少なくありません。そして信頼関係を構築するためにはそうした雑談をこそ傾聴し、利用者様に興味を持つ必要があります。
そのような関わりを通して構築される信頼関係は強固なものになりやすいものです。

本来は施設型の事業所でもこのような関わりが提供されるべきなのかもしれませんし中にはそのような施設もあることでしょう。訪問介護であっても時間中常に動き続ける必要のある作業量の多いサービスも存在します。しかしながら訪問介護では一対一の空間でより密接に関わりやすいということは言えるのではないでしょうか。

メリット2.パートなら自由な時間帯で働きやすい

パートタイムとして勤務するなら、働き始めは一日に一件や二件の仕事しかないということも少なくありません。どれだけ人不足の事業所であっても、そこまで都合よく割り振られるサービスはないでしょう。

これは給料面では不安にも繋がりますが、午前中に2件だけ訪問するような働き方で午後の家事の時間などを確保することもできます。

メリット3.正社員では介護外の業務に従事して営業などのスキルが磨ける

正社員では勤務時間中の介護サービス外の時間でも給料が発生しますが、その分営業活動などに従事する必要があります。

介護だけを延々と実施するのではなく移動時間や営業、事務作業などに従事することが働きやすさに繋がる場合もあります。

しかし事務仕事が苦手であったり、営業に自信がない場合などにはデメリットと感じる方もいるかもしれません。

デメリット1.訪問介護員一人でアクシデントに対応しなければならない

この一対一で関わるという部分はデメリットになる場合もあります。
ミスやアクシデントのフォローを期待することは難しく、利用者様が拒否を示したり不穏な状態になったりしても介護者を交代するような対応はできません。

訪問介護について考えるとき、一対一で介護を行うことのメリットとデメリットを考える必要があるでしょう。

デメリット2.介護サービスの実施量が安定しない

施設型の事業所では入居者の人数と職員の人数が調整され、施設のスケジュールに合わせて業務が発生します。朝には更衣、朝食、昼には入浴、レクリエーションなどがそれです。基本的に業務時間中は常に業務があり、パートでも正社員でも常に給料が発生します。

対して訪問介護では利用者様の生活スタイルに合わせてサービスが組まれます。利用者様の入院などで利用が終了することもあれば、家族が来るから今週だけキャンセルなどということもあるでしょう。そもそも8時間の勤務時間中に移動支援を除いた全ての時間で都合よくサービスに従事できるわけでもありません。

これは前述のようなメリットにも繋がりますが、給料が安定しない点や介護外業務に従事する必要があるという点でデメリットにもなるでしょう。

デメリット3.正社員での雇用が少ない

介護サービスの実施量が安定しないという点は正社員での雇用は少なくなるというデメリットにも繋がります。
訪問介護事業所で他の事業所を併設しない場合は、基本的に全ての収入は訪問介護を実施してこそ発生します。そのため訪問介護に従事しない時間にも給料が発生する正社員を多く雇用することが金銭的にも困難になるのです。
そもそも女性の多い職場で正社員ニーズの低い職場でもありますが、正社員として働くことが困難で、その分正社員に求められる能力は高くなるという点をしっかりと理解しておきましょう。

 

入居施設や通所施設などの利用者様側から来てもらう形ではなく、こちらから伺うという訪問介護の特性がもたらすメリットとデメリットについてしっかりと理解しておきたいところです。

訪問介護でよくある悩みとは?

一対一で介護を提供するという特性、介護者側から伺うという特性は訪問介護員として働く場合の悩みや苦悩にも繋がります。

前述の通り、利用者様に拒否されてしまうこともあるでしょう。そこまででなくとも、人間同士相性というものは一定存在します。

施設においては職員と利用者様で関係性が悪化すると帰る場所がない、頼る先のない利用者様が遠慮してくれているということもあるでしょう。利用者様の側に「お世話になっている」という思いが強い場合もあるかもしれません。

しかし訪問介護において介護の実践は利用者様の家で行われます。まさしく利用者様のホームであり、城なのです。

そんな中で「自分はしてあげているのに」という間違った思いを抱いてしまうことは関係の悪化を助長するばかりか、訪問介護員にとっても精神的に大きな負担となります。

大切なのは利用者様は要介護者であると同時にお客様だという意識を大切にすることです。
本来は施設型の介護事業所でも意識されるべきですが、訪問介護に置いてはより一層注意が必要であると言うことが出来るでしょう。

 

訪問介護は他の様々な介護事業と比べても特徴的な業態をとる事業です。
だからこそ独自のやりがいや楽しみもあり、同時に悩みやデメリットが存在するということを理解すれば、訪問介護に対する理解はより一層深まることでしょう。

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