人間関係に関する悩みは辛いものです。介護職の現場においても、人間関係で悩んでいる人は少なくありません。人間関係で悩むあまりに、自分の思う通りに上手く仕事が出来ないなんてことはありませんか?
ここでは、多くの介護職員の人が悩んでいる人間関係の悩みについて、どのように乗り越えていくべきか、また介護職の現場においてどこにでもついてまわる人間関係の問題とどのように向き合っていくべきかについて紹介します。
介護業界の人間関係
多くの介護職員が抱える人間関係の悩み
厚生労働省所管の公益財団法人「介護労働安定センター」の調査によると、2015年10月からの1年間に全国の介護職員の16.7%が退職したと公表しました。全産業の離職率は平均15%のため介護業界の離職率の高さがうかがえます。
では、どうして退職したのか理由をみていきましょう。
退職理由として多いものに心身の不調、法人や事業所への不満に次いで、人間関係の問題が3番目にあげられています。
出典:厚生労働省 平成29年8月23日 介護人材確保対策より
しかし、実際はどうなのでしょうか?
クリックジョブ介護が行ったアンケート結果をみてみると、人間関係の問題によって職場を辞めている方が多いのが現状です。
このように、人間関係で悩んでいる介護職員は、とても多いのです。
介護施設の人間関係が大変な理由
人間関係に関する悩みはどのような職場でもつきものです。その中でも、特に介護現場で人間関係が悪化しやすいのはなぜでしょうか。介護現場で人間関係が大変な理由として、以下のことがあげられます。
女性の比率が高い
厚生労働省によると施設で働く介護職員は73%、訪問介護員は88.6%が女性です。女性の多い職場では、感情に左右されやすいなど女性特有のネガティブな面がでることがあります。そのため、人の悪口を言ったり、無視をしたり、根拠のない噂話を流すなどのいじめが起こりやすくなってしまうのです。
幅広い年齢層が活躍している
グラフから30代・40代の方をメインに幅広い年齢層の方が介護業界で活躍していることがわかります。10代から60代、場合によっては70代の方が働いているため、皆の意見を揃えようとなると苦労することがあります。
責任が重い仕事である
介護現場でミスをするということは、重大な事故につながる恐れがあり、利用者様の命を危険にさらすことになります。介護の仕事は、人の命にも関わる責任の大きい仕事であるため、新人や若手への指導が厳しくなることがあります。そのため指導を受ける側からすると、いつも怒られてばかりでストレスを抱えてしまうのです。
それぞれの介護観が異なる
介護の職場では様々な価値観を持つ人が集まっています。介護業界が長いベテランの方もいれば、全く違う業種から介護業界に転職してきた未経験の方もいます。これまで働いてきた職場やその環境によって、介護観は全く異なります。
例えば歩行状態が不安定な方に、「転倒してはいけない」と車いすの使用を勧める介護職員もいれば、「歩くことが出来ているから、車いすを使う必要は無い」と出来るだけ歩いてもらえるように促す介護職員もいます。
安全を確保することも必要ですし、今ある機能を生かしていくことも正しいため、どちらの意見も間違ってはいません。しかし、実際にはこういったことで職員同士の意見が対立して、人間関係を難しくするのです。
介護はチームプレイの仕事のため、介護職員同士の協力が必要ですが、介護の現場ではこのように人間関係をこじらせる要因が多く存在しているのです。
人間関係に悩まされない方法
価値観の違いを受け入れる
価値観は人によってそれぞれ異なります。介護に正解はありません。ですから、介護の方法で対立することは当たり前なのです。まずは職場の人の介護観を知ることを心がけてみましょう。価値観の違いを受け入れ、また同調出来るところが見つかれば、人間関係が悪くなることはありません。
中立の立場をとる
派閥争いがある職場では、中立の立場でいることを心がけてみましょう。なるべく色んな人に話しかけ、どちらにも同調しつつ、自分の意見を持つことが大事です。自分はあくまで中立である事を誇示しておけば、何か事が起こっても巻き込まれません。
周囲との信頼関係を築いておく
相手があなたに対して好感を持つ関わり方を身に付ける事です。人は自分に似た人に安心や親近感を覚え、信頼をおきます。
相手に話す速さやリズムを合わせたり、態度や、ジェスチャーを似せたりすることや、また話の内容に共感、同調したり、同じ言葉の表現を使ったりすることも効果的です。
仕事以外の逃げ場をつくる
職場以外に自分の居場所を見つけましょう。異なる職種に勤めている友人と触れ合うことで、多種多様な価値観に触れることができます。また、息抜きできる趣味が1つ2つあると、気持ちが不安定になった時に、逃げ道をつくることができます。人生の楽しみがあれば、目の前の仕事も苦ではなくなります。
全てを真に受けない
介護観はひとそれぞれで、自分が納得できないことも出てくるでしょう。全てを真に受けるのではなく、適度に話を流すことも時には重要です。
自己肯定感を満たす
人は自身を肯定してもらいたいという承認欲求を持っています。
褒める、認める、ねぎらうなど、相手を肯定し、心を満たしてあげましょう。
積極的な傾聴
短時間で、深く心を通わせるにはこの方法が有効です。相手にとって心地よく自分の話を聞いてくれる存在になりましょう。
人間関係の悩み解決方法
自分の言動を振り返る
人間関係を良くするには全て相手のせいにするのではなく、自分自身を省みる事も必要です。
以下では、嫌われる介護職員の言動を挙げています。日頃の自分の行動を思い出して当てはまるものがないか確認してみましょう。
【介護職員の嫌われる行動】
これらは新人によく見られる傾向です。また新人を教育する立場の方も言動には注意が必要です。
いかがでしょうか?
あてはまる項目はありましたか?もし当てはまる項目があったら、それがあなたの人間関係が上手くいかない原因かもしれません。
自分の仕事への姿勢へ周りの職員への接し方など、今一度見直してみましょう。
仕事で自分の強みを持つ
あなたならではの仕事の強みを持ちましょう。例えば「認知症の方への対応なら私が1番詳しい!」や「おむつ交換は私が1番早い」など、何か一つでも「自分が1番うまく出来る!」と自信をもって言えるものがあれば、周りから一目置かれるでしょう。
またスキルアップのための、資格取得の勉強をするのもオススメです。例えば、デイサービスで勤務をしていてレクリエーションの機会が多いなら「レクリエーション介護士」の資格を取得することで大きな強みとなり、周りから重宝されます。
新人介護職員の場合は、ナースコールに積極的に対応したり、誰よりも元気な挨拶をしたり、常に笑顔でいるこよを心がけたりと自分がまずはできることを見つけて実行しましょう。
自分の強みを見つけて伸ばすことで、周囲の職員から認められて信頼されるようになるため、人間関係もスムーズにいくようになります。また、介護職員の自分に自身がつくため、日々の仕事も楽しくなるでしょう。
信頼できる人に相談する
職場の同僚や先輩、上司に悩みを相談することで、ストレスが軽減されたり、抱え込んでいた悩みが解決することもあります。
誰にも相談せずに1人で悩み、退職する方もいますが、できれば誰かに相談することをおすすめします。
1人で悩んでいるとどうしても視野が狭くなり、冷静な判断が難しくなります。人に話をすることで自分の状況を客観的に捉え、広い視野で解決方法を考えることができるようになります。
相談相手は、あなたが信頼できて1番話しやすい人にしましょう。新人介護職員の場合は、指導係の先輩に、中堅介護職員の場合、信頼できる同僚やチームリーダー、主任等相談するのがいいでしょう。ただし相談相手を間違ってしまいますと、余計に問題が悪化してしまう恐れがあります。そのため、相談相手は慎重に選びましょう。
また、同じ職場の人には相談できないことや、上司からのパワハラを相談したい場合は、職場の組合や行政の専門相談機関に相談することもできます。
例えば東京都では、福祉従事者の方の抱える様々な悩みや不安を解消するために、電話や面談による相談を行っています。
▼福祉・介護職員等の悩み相談(東京都福祉保健局)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kiban/fukushijinzai/teichakuikusei/soudan.html
絶対にやってはいけない行動
職場で人間関係を悪くしないために、注意したい行動があります。感情的で冷静な判断ができない時の行動は特に危険なので注意しましょう。
感情的になった時の対処法
感情的になってしまった時は、冷静な判断が戻るまで時間を置きます。自分の行動を客観視できるようになれば、人間関係を悪化させる危険な行動に気が付く事が出来るでしょう。
改善しない場合は、転職も視野に
自分の言動を変えたり、相談したりしても改善が見られない場合や、「人間関係が完全にこじれてしまって、どうしようもない!」という場合などは、思い切って転職をするのも一つの手段です。
転職はネガティブなことではない
人間関係で悩んで転職というと、どうしてもネガティブな印象を持ってしまいがちです。
しかし実際に、クリックジョブ介護のアンケートでみんなの人間関係のトラブル解決方法を聞いたところ、最も多かった回答は「自分が辞めた・転職した」という結果でした。今いる職場を抜け出して新しい環境に移動することによって人間関係の悩みから解放され、介護の仕事に専念することができるためポジティブな選択肢といえるのです。
退職理由は無難なものを伝える
人間関係が悩みで退職する場合でも、退職理由は無難で、且つ前向きな理由にしましょう。職場への不平不満を話してしまうと、円満とはいかない上、「来年から改善する」「給与を上げる」などと引き止めの材料にされるおそれもあるためです。
「どうしてもやりたい仕事がある」「キャリアアップするために新たな環境に移りたい」など、前向き且つ納得のいく理由にしましょう。
面接での退職理由の伝え方
前向きな理由を伝える
人間関係が理由でも、それ以外のことを伝えましょう。そのまま伝えてしまうと、採用担当者は、あなたが入社した後もまた辞めてしまうのではないかと思ってしまいます。「キャリアアップしたいから」「新しい職場ではこれを頑張りたい」など、入社後に焦点を当てた伝え方が良いでしょう。
真剣な表情で話す
面接時、笑顔でいることも大事ですが、質問される内容に応じて、表情にメリハリをつけると尚良いでしょう。退職理由を伝える時は真剣な顔や熱意を込めた表情に変えることで、面接官をより惹きつけることができます。
入社の覚悟が伝わるトーンで話す
退職理由を述べる時は、表情に合わせて真剣なトーンで伝えるのが良いでしょう。ただ退職理由を伝えるだけではなく、入社の覚悟も伝えて下さい。ただし、真剣になりすぎて暗くならないように気を付けましょう。
人間関係の良い職場の探し方
人間関係の良い職場を見つける最も良い方法は、実際にその職場で働いている介護職員から直接話を聞くことです。もしも知り合いが応募したい職場で働いているなら、ぜひ直接声を聴いてみてください。
もし、応募したい施設に知り合いがいない場合は、面接や施設見学のときに職場の雰囲気を良く見ることが大切です。
また、介護業界の転職サイトに登録して、転職エージェントから人間関係の良い職場を紹介してもらうこともできます。クリックジョブ介護では、多くの紹介実績があるため、施設の内部情報にも詳しく、あなたにピッタリの職場をご紹介することができます。
転職で「全て解決」するわけではない
人間関係はずっとついて回る問題です。転職先が必ずしも自分の望むものとは限りません。転職をして新しい環境に変わっても、またそこで人間関係で苦労するかもしれません。「相手が意地悪をするから」「自分の運が悪かった」と人間関係を理由に再び辞めてしまっては、これからもずっと人間関係で悩み、転勤を繰り返すことになってしまうでしょう。
しかし、転職は良いチャンスです。人間関係の悩みを環境や相手の問題にするのではなく、転職を機に、自分の行動などを振り返り、人間関係で困らないあなたに生まれ変わるように努めましょう。相手はなぜ自分にひどい態度をとるのか?自分に非はないのか、相手の立場に立って考えてみてください。簡単なことでなありませんが、そう考え続けることによって、自分の反省するべき点が見つかり、今後に活かすことができます。
困難なことが起きた時は、自分の成長するチャンスだと考えましょう。そうすることで、辛い人間関係のトラブルも、実は自分がさらに成長するために必要なことであると思えるようになります。