厚生労働省によると、2025年にはおよそ38万人もの介護職員が不足するとされています。2018年は3年に1度の介護報酬が見直される年であり、0.54%の引き上げとなりました。介護報酬がプラスに改定されれば、事業所の売り上げが向上し、それにより介護職員の待遇改善、人材不足の解消が期待できるとされています。
介護業界特化型の人材紹介サービスやオウンドメディア運営を行うライフワンズ株式会社(本社:東京都目黒区上目黒)は、今回の介護報酬改正について、介護職員がどのような反応を示したか把握するため、全国の介護従事者を対象にアンケートを行い109名から回答を得ました。
目次
調査結果の概要
調査結果の詳細
5人に1人が介護報酬「知らない」
はじめに「あなたは介護報酬について知っていますか?」と聞いたところ、次のような結果になりました。
介護報酬について「詳しく知っている」と回答した人は6%のみで、詳しくはないにしろ大半が知っている結果となりました。しかしその一方で、自身の待遇に大きく関わるにも係らず、介護報酬を「知らない」、「全く知らない」人が2割いる実態が浮かび上がりました。
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8割が介護報酬の動向について注目
介護職員に「介護報酬の動向に注目しているか」を聞いたところ、「大いに注目している」と「注目している」を合わせた割合は8割を超えており、多くの介護職員が介護報酬の動向に注目していることが分かりました。
介護報酬0.54%の引き上げへの主な反応は「支持する」と「どちらでもない」
2018年度の介護報酬を0.54%引き上げにすることについては、「大いに支持する」、「支持する」と回答した人が全体の45%で最も多く、次点が「どちらでもない」で40%でした。今回の介護報酬改訂について、支持する人とどちらでもない人に大きく分かれる結果となりました。
それぞれの回答のコメントをご紹介します。
●「大いに支持する」、「支持する」と回答した方の回答(一部抜粋)
・ただでさえ給料が安いので、介護報酬が上がると少しでも給料アップに繋がるから。(京都府/20代/女性)
・まだ労働に合った給料を支給されていないと思うから。(兵庫県/50代/女性)
・少しでも(給与が)改善されれば、ゆとりを持って介護することができて、介護する側も、される側も、良くなると思うから。(岐阜県/50代/女性)
・利用者への負担は増加してしまうが、介護職員の待遇が少しでも良くなることにより、人員削減や働き方が変わってくると思う。(茨木県/30代/女性)
・人手不足が解消され、勤務状況が改善されるのではと期待している。(福岡県/50代/女性)
・報酬が上がれば、人手不足が緩和すると思う。(東京都/30代/女性)
「大いに支持する」、「支持する」とした理由は、現状の給与に対する不満から賃金の引き上げの期待や、介護職の人手不足の解消への期待の声が見受けられました。
●「どちらでもない」、「分からない」と回答した方の回答(一部抜粋)
・引き上げして欲しい反面、その分のしわ寄せが税金などで賄うようになるのかと思うと微妙な気持ちだから。(神奈川県/40代/男性)
・年金だけでは足りていない利用者が多くいるのに、利用者1人ひとりの負担が増えるのは良くないから。(東京都/30代/男性)
・施設収入が増えるとはいえ、介護職員に還元されるとは思えないから。(東京都/30代/男性)
・賃金の増加は嬉しいが、利用者の負担が増えるのはどうかと思うから。(長野県/40代/女性)
・そもそも(介護報酬について)よく分からないので、どういった影響が出るのか分からないから。(大阪府/20代/女性)
「どちらでもない」、「分からない」とした理由は、介護報酬の引き上げによる利用者の負担の増加を心配する声や、介護報酬が増加しても自分自身の待遇に変化を期待していないとの声がありました。
また、そもそも介護報酬について分からないといった声や、介護報酬という言葉を知っていても介護報酬の改定によって、自身にどのような影響があるのか分からないといった声もありました。
●「大いに支持しない」、「支持しない」と回答した方の回答(一部抜粋)
・施設によっては、介護報酬が還元されないところもあるから。(東京都/40代/女性)
・会社の収入で、会社の裁量になってしまう。ならば、国から直接個人への配布などにしないと、賃金は上がらない。(埼玉県/50代/女性)
・少しの報酬アップでは、介護スタッフの人材確保、育成には繋がらない。 もっと抜本的に改革しないと1番困るのは、スタッフであり、利用者だから。(福岡県/40代/男性)
・引き上げ率が低すぎる。介護職離れがこれではとどまらないから。(東京都/40代/男性)
「大いに支持しない」、「支持しない」とした理由は、今回の介護報酬の引き上げ率が低いこと、介護報酬が上がっても職員には還元をされないのではないかといった不満、より抜本的な改革を求める声が見受けられました。
人手不足の改善は6割が「期待していない」
今回の介護報酬の引き上げで人手不足の改善を「全く期待していない」、「期待していない」の回答は6割となりました。その要因としては、介護報酬の引き上げによる賃金の増加が期待できないといった意見や、そもそも賃金の増加だけでは人手不足解消の解決にはならないといった意見がありました。
人手不足解消には働く環境やイメージ改善も必要
それでは、どのようにすれば介護業界の人手不足を解消することができるのでしょうか。解消の一手として最も多く選ばれたのは「賃金の引き上げ」、続いて「1人当たりの業務負担の軽減」、「介護職の社会的地位の向上」となり、それぞれ過半数の人が選ぶ結果となりました。
このことから、人手不足の解消には賃金の引き上げだけではなく、介護職員の働く環境やイメージの改善も重視されていることが明らかになりました。
今回の調査で、全体の8割が介護報酬の動向に「注目している」という結果となり、介護報酬への高い関心が明らかになりました。しかしその一方で、5人に1人は介護報酬について「知らない」と回答していたり、介護報酬については知っていても自分にどのような影響が出るのか具体的には分からないといった意見だったり、介護報酬についての更なる認知の必要性が伺えました。
0.54%の介護報酬引き上げについては、賃金のアップを期待し「支持する」意見と自身の待遇に還元されるか疑問を持つ方や、利用者様の負担増を心配し「どちらでもない」意見に大きく分かれました。また介護報酬引き上げによる人手不足の解消には6割以上が「期待していない」結果となりました。人手不足の解消には賃金の引き上げを行うだけではなく、「1人当たりの業務負担の軽減」や「介護職の社会的地位の向上」の対策を行うことも必要であることが分かりました。
調査対象:介護職員 男女109名
調査方法:インターネットを利用したアンケート調査
調査実施期間:2018年1月17日~2018年1月25日