全ての要介護者が介護サービスを利用するために必要なプロセスとして、ケアプランの作成があります。
・利用者の現状や目標とすべき状態を目指すために指定された様式にまとめる。
・利用するサービスを決定し、利用者とサービス事業者間の利用調整を行い、スケジュールを作成する。
これらの居宅介護計画、通称ケアプランを作成するのが居宅介護支援事業所です。
ケアプランがなくては要介護認定を受けていても介護サービスを利用することが出来ません。
要介護者の大半が利用することになる介護サービスの屋台骨こそが居宅介護支援。
今回はそんな居宅介護支援事業所について、紹介いたします。
目次
1. 居宅介護支援事業所とは
在宅介護において、専門性が求められるケアプランの作成
ケアプランは、実は必ずしも専門職者が作成すべきものではなく、利用者や家族が自作することが可能です。
介護保険から費用を負担して専門職者が代行するサービスであるため、ケアプランの作成には高い専門性が必要であるということを理解する必要があるでしょう。
そのため、ケアプランは本人や家族を除けば介護支援専門員の資格を有する者にしか作成することが出来ません。
国家資格である介護支援専門員(ケアマネジャー)とは?
その介護支援専門員、つまりケアマネジャーという資格は介護関連資格の中でも最上級と言われることもある資格です。
指定の国家資格を所有し、かつ5年以上の実務経験がある者しか受験することが出来ない資格で、都道府県が認定する公的資格でありながら前提条件に国家資格を求められるという点でも、資格取得の難易度の高さが分かります。
更に、多くの介護保険サービスと異なり令和3年現在、利用者自身に費用の負担も発生しません。
近年の介護保険制度改正議論で争点となっている点であり、今後は費用負担が発生する可能性もあるものの、現状では費用負担は0円となっています。
これは国内においてそれほど有資格者によるケアプラン作成が重要視されているとも言えます。
2. 居宅介護支援事業所の仕事内容
介護支援専門員として、相談援助業務に従事する
ケアマネジャーとしての相談援助業務は大きく分けて以下の2種類です。
①新規利用者のケアプラン作成やサービス担当者会議など、特定のタイミングで発生する業務
②利用者宅への訪問や介護請求、提供表の作成など毎月発生する業務
ケアプランの作成や他の事業所との連絡調整など事務仕事のイメージが強いケアマネですが、実際には利用者宅への訪問や退院後の介護サービス利用に向けた病院でのカンファレンスなど、外回りも多い職種です。
給料の殆どが国保連からの介護報酬であり、原則的には担当利用者1名につき1万円程度、40名以上担当すると介護報酬が減算されてしまいます。
更に毎月の訪問を怠った場合や必要時に担当者会議が開催されていない場合などにも減算が発生するため、30名以上の利用者を担当しつつ訪問や会議などを確実に実施する必要があります。
相談援助以外の業務として、利用者が少ない場合には病院などに営業に行くことを求められる場合もあるでしょう。
3. 居宅介護支援事業所の職場環境
同法人内に他の事業所を保有するか重要なポイント
ケアマネジャーの業務の内で、サービス事業所を紹介し契約に繋げる業務には法人の方針が大きく関わる場合があります。
すなわち、『同一法人内の提供サービスを利用するケアプランの作成』が求められる場合です。
法的には、一部のサービスについて特定の法人への紹介率が80%を超過すると減算が発生するように整備されています。
しかし、減算対象外のサービスや、減算対象となるサービスであっても80%以内であれば一つの法人に集中した紹介が可能であるとも言えます。
このことから居宅介護支援事業所を『同法人内の他事業所に優先的に利益を発生させるための事業所』と捉えて運営するような法人も、中には存在することにため、注意が必要です。
他にも利用者数が少ない事業所では営業活動を積極的に行うよう求められる場合もあり、営業成績や同法人内での紹介件数などにノルマが設定される場合や、ノルマとして明示されずとも圧力を感じるような環境の職場でないかを確認しておきましょう。
4. 居宅介護支援事業所の1日のスケジュール
主体的にスケジュールを組み立てる能力が必要
月末には請求関連業務があり、また翌月までに提供表を発行する必要もあります。
これらの締切のある業務を上手く割り振りつつ、新規利用者との面談や会議の予定などを組み立てるスケジュール管理を主体的に行う能力が、ケアマネジャーには重要になります。
また、ケアマネジャーは利用者にとって「なんでも相談できる相手」であり、問題が発生すれば夜間に突然電話がかかってくることもあります。
思いがけない残業が発生するリスクも少なくありません。日々の業務は日勤ですが、緊急時などには利用者の元へ駆けつける必要もあるという点は理解しておきましょう。
5. 居宅介護支援事業所に向いている人
主体的に働くことにやりがいを感じる方にオススメ
ケアマネジャーとして働く場合、大きく分けて居宅ケアマネとして働くか施設ケアマネとして働くかを選ぶことになります。居宅介護支援事業所で働くということは、居宅ケアマネとして勤務するということです。
ここでは、施設ケアマネではなく居宅ケアマネとして勤務することに向いている人を紹介していきます。
①主体的にスケジュールを組み立てて働くことが好きな人
施設ケアマネでは、基本的に施設のスケジュールに合わせて勤務することになります。介護業務の補助などを求められることもあるかもしれませんし、事務員としての業務も担うことになります。
対して居宅ケアマネでは、自分でスケジュールを組み立てて主体的に働くことを求められます。
働きやすさ、やりがいを感じる人と、プレッシャーに感じる人に分かれる部分でしょう。
②独自のプランを提供し、より利用者の近くで喜びを共有したい人
施設ケアマネにおいては、基本的にケアプランは施設で提供されるサービスを必要としている時間数や内容に応じて組み立てることになります。
ケアプランの内容はある程度固定されることが多いです。
対して居宅ケアマネでは、自由な発想でケアプランを作成することが出来ます。
その分、時間をかけ、頭を悩ませ検討する必要がありますが、結果として、利用者の生活状況の改善や、やりがいを実感しやすい環境とも言えます。
③様々なサービス関係者と円滑にコミュニケーションが取れる人
居宅ケアマネでは利用者に紹介できるサービス事業所の数が多いほどケアプランを柔軟に作成できます。
自宅での入浴やデイサービスでの入浴よりも、訪問入浴サービスを利用するほうが向いていると判断しても、訪問入浴の事業所に伝手がなければ紹介することが出来ません。
そのため幅広い事業所と繋がりをもち、人間関係を築くことは居宅ケアマネとして働く上で非常に重要な能力になります。
社交的で人間関係を楽しむことが出来る人にはオススメです。