在宅高齢者の暮らしをサポートするホームヘルパー(訪問介護員)が高齢化してきています。公益財団法人「介護労働安定センター」によると、全国のホームヘルパーのうち、60歳以上の方は36%で、15%だった10年前に比べると倍以上の数です。
今や70代のホームヘルパーも珍しくなく、中には86歳のホームヘルパーもいらっしゃいます。 明確な定年が設定されていない介護業界では、人生経験豊富な熟年ヘルパーが活躍していく時代になりつつあります。今回はそんな高齢者ヘルパーが重宝されることになった背景と、雇用者側がどんなことに留意してきたのかご紹介します。
なぜ高齢者ヘルパーが増えたのか?
高齢者ヘルパーが増えた理由としては、高齢者雇用の「ニーズ」と雇用側の「経営メリット」、働く側の「ワークスタイル」の3点が挙げられます。
1点目の「ニーズ」は、介護職に限らず少子高齢化の影響で、高齢者雇用が必然的に求められています。少子高齢化により量的に労働者が減少してきています。そのうえ改正高年齢者等雇用安定法によって各企業に65歳までの安定した雇用確保が義務化され、高齢者雇用は全業界で必要を迫られています。さらに介護業界全体で、新たに人を集めることが難しい現状があり、他業種よりも高齢者雇用に踏み切る必要がありました。
2点目の「経営メリット」としては、高齢者の方は人生経験・生活経験が豊富でサービス提供体制を強化できることが強みとされています。加齢によって業務処理能力や体力の衰えはあっても、それ以上に経験に基づく知恵や総合的な応用力は十分にサービスに活用できます。
3点目の「ワークスタイル」は、短時間ずつ仕事をするホームヘルパー独特の勤務体系です。長時間働くことが難しくても、少しずつの勤務であれば働きやすく、高齢者に向いているといえるのです。また小さな子を持つ親にとって厳しい、早朝や夜・祝日の勤務も、高齢者であれば比較的自由に調整をすることができるので、他の年代の方にとっても高齢者の存在は有難いのです。
これらの要因により、高齢者ヘルパーが年々増加の一途を辿っています。
高齢者ヘルパーを雇用する際に気をつけているポイント
高齢者ヘルパーが増加した背景には、もちろん雇用側の配慮もあります。体力的な面でのサポートはもちろん、他にも配慮しているポイントが2点あります。
1つ目は一人ひとりの個人差を把握することです。高齢者ヘルパーと一括りにしても、個人によって体力、能力、モチベーションには大きな差があります。日常的にコミュニケーションをとってそれぞれの状況を把握し、安定したサービスを提供できるように配慮をしています。
2つ目は処理能力、体力の衰えに対するフォローです。マニュアルやテキストの文字を大きくしたり、無理な身体介護を避けたりし、それぞれができる範囲のサービス提供できるよう工夫をしています。
今後高齢化はより進行し、介護業界にとって、高齢者ヘルパーはますます欠かせない存在になっていくでしょう。高齢者が働きやすいよう、様々な工夫がされてはおりますが、通勤時やケアの最中の事故が発生しているなどの課題も残っています。高齢者ヘルパーに安心して働いてもらえるよう、より一層の安全面での対策が必要です。