介護施設での食事の時間は、利用者さんにとって、一日の楽しみになっていることが多いです。
一方、食事介助をする職員には細心の注意が求められるため、緊張してしまう方も少なくありません。
この記事では、正しい食事介助の方法や姿勢を紹介します。
利用者さんに安全に食事を楽しんでいただくため、基本から確認してみましょう。
目次
食事介助の三原則
まずは、食事介助の原則を紹介します。
立って食事介助をしない
立ったまま食事介助をするのは避けましょう。
職員が立っていると、どうしても利用者さんは見上げる姿勢になります。
あごが上がった状態では、むせやすくなってしまうため、必ず職員も席について食事介助をしましょう。
一口の量を適切にする
一回で食べさせる量が多くなりすぎないよう、注意が必要です。
嚥下機能が低下している方は、一度に飲み込める量が少なくなっています。
安全に飲み込める一口の量は、個人で異なるため、はじめはティースプーン1杯程度から口に入れましょう。
飲み込みを確認する
口に入れた食べ物を飲み込んでいただけたか、しっかり観察しましょう。
確認をせずに、次々と利用者さんの口に食べ物を運んでしまうと、誤嚥の原因になってしまいます。
喉仏の上下の動きを見て、飲み込んだことを確認してから、次の一口を入れることが大切です。
食事介助の注意点
食事介助を行う前に、以下のポイントに注意しましょう。
覚醒状態を確認する
誤嚥や窒息を防ぐため、利用者さんがしっかりと目覚めた状態で、食事に向かえるようにしましょう。
うとうとした様子であれば、声をかけたり、簡単なストレッチをしていただくのも一つの手です。
排泄は事前に済ませていただく
排泄は、事前に済ませていただくことが大切です。
途中でトイレに行く際には、いったん食事を中断しなくてはなりません。
また、ポータブルトイレを使用する場合、部屋の中に臭気が残ってしまいます。
食が進まなくなってしまうのを防ぐため、あらかじめお声かけして促しましょう。
食事に集中できる環境を整える
利用者さんの意識が、自然と食事に向く環境を心がけましょう。
例えば、テレビがついていると、食事に集中できない可能性があります。
テレビを消すと、静かでかえって落ち着かない場合は、ゆったりとした音楽を流すのがおすすめです。
また、長時間になると、利用者さんが疲れてしまうため、食事の時間は30~40分程度を目安に考えましょう。
食事介助の姿勢
食事介助の姿勢を、3つのケースに分けて紹介します。
テーブル・椅子での食事介助
座位を保てる利用者さんには、できるだけテーブルと椅子で食事をしてもらいましょう。
重力によって、食べ物が胃に送り込みやすくなるためです。
- テーブルは、肘が90度に曲がる程度の高さに
- 椅子は、かかとがしっかり床につく高さに
- 姿勢は、前かがみであごを引きぎみに
車椅子の利用者さんは、車椅子のままでも構いません。
ただし、フットレストから足をおろし、床から身体が浮かないよう注意しましょう。
足が床から浮いてしまうと、姿勢が崩れやすくなり、食べることが難しくなってしまいます。
ベッド上での食事介助
利用者さんの身体状況に応じ、ベッド上で食事をするケースもあるでしょう。
その際は、以下のポイントを意識しましょう。
- リクライニング角度は45度以上が目安
- 膝は軽く曲げられるように
- 膝下にクッションを挟むと姿勢が楽になる
- あごを引けるように、後頭部にクッションを挟む
体幹が不安定な方や、食べ物が口からこぼれてしまう方は、リクライニング角度を30度くらいにすると、誤嚥のリスクを抑えられます。
ただし適切な角度は、利用者さんと相談しながら、調整するようにしましょう。
片麻痺の方の食事介助
片麻痺の方は、食べる姿勢によって意識するポイントが変わります。
「座位」「側臥位」に分けて、解説していきます。
座位の場合
座位を保てる方であれば、職員は利用者さんの健側(麻痺のない側)に座って、食事介助をしましょう。
麻痺側の腕をテーブルの上に乗せることで、姿勢を保ちやすくなり、体が傾くのを防げます。
また、足は足裏を床面にしっかりつけて、支持基底面を広くし、姿勢を安定させましょう。
側臥位の場合
側臥位で食事をする方は、健側を下にして寝ていただきます。
健側を下にすることで、食べ物が重力で健側の咽頭に落ち、咀嚼や嚥下をしやすくなるためです。
また、食事の途中で体勢が崩れてしまわないよう、クッションで背中や頭の下を支えましょう。
まとめ
食事介助では、基本を守りながら、一人ひとりに応じた工夫をすることが大切です。
食事を座位で取るかベッド上で取るかによって、適切な姿勢は異なります。
利用者さんが誤嚥や窒息を起こすことなく食事を楽しめるよう、丁寧な食事介助に取り組みましょう。