介護記録を場面別の具体例で紹介~施設編~

介護施設での介護記録は昼夜を問わず、生活全般を観察し、記録していきます。
施設では、介護職のほか、看護師やリハビリ職、相談員など様々な職種の職員が携わっているため、互いに連携をとるためにも、介護記録は重要です。
今回は施設での場面別(排せつ、食事、入浴)の介護記録のポイントや具体例をご紹介します。

 

基本的な介護記録の書き方はこちら

排せつ

介護業務にて記録することが多い、排せつの記録。それぞれの施設等により排せつの記録表がありますので記録表に準じた記録をします。
排泄は利用者様の尊厳に関わるケアです。排泄の記録をから排泄パターンを探り、プライドを傷つけないようケアに役立てましょう。

排せつの記録ポイント

・便の形状や量はどうか
・表情や様子はどうか
・失禁はしていないか
・排泄パターンはどうか

排泄物で利用者様の健康状態が分かるため、便の量・形態・匂いについても記録しましょう。

形状は、硬便、普通便、柔便、水様便など。大きさは、コロコロ、バナナ大、ソーセージ大、こぶし大、親指大、など。少量~大量は施設の皆さんで認識を合わせておきましょう。

排せつの記入例

表現例

 

・便の形状や量はどうか

 例:下痢便、多量、匂いがきつい、未消化便ではなく、血液も混じっていない。 

・表情や様子はどうか

 例:恥ずかしくすまない表情。

・失禁はしていないか

 例:下剤を飲んだ夜は大きめのパッドを着用していたが、パッドに収まらずベッド上に漏れてしまう。トイレに間に合わず失禁してしまう

・排泄パターンはどうか

 例:便秘が四日目に入ったため、下剤を投与。前日20時に飲み、朝6時に失禁があった

 

排せつ記録の良い・悪い例

悪い例
6:00 居室に行くと便臭あり、便失禁している。大パッドから漏れ、シーツまで汚染。清拭し交換する。
6:20 トイレ誘導し、トイレでも排便あった。その後声かけ、洗面を済ます。
7:20 居室におり朝食の声をかけても無視される。繰り返し声をかけてやっとフロアに出てくる。

 

良い例

6:00 ベッド上でリハパン脱ごうとしている。便失禁あり。水様便・多量)。代パッドから漏れ、シーツまで汚染。清拭し交換。「汚くてごめんね」と言うので、下剤が効きすぎましたねと話す。

6:20 トイレへ行き、再度排便あり(軟便・少量)。洗面所で洗顔する。

7:20 居室におり朝食の声をかけるも、「くそたれてしまった」と呟き動かない。「運をわけてもらいました!」と言うと笑ってフロアに移動する。

 

改善部分

表情や様子についても記入しましょう。また、排泄に行く前から後まで一連の流れを意識しましょう。

食事

食事の記録については食事摂取記録表などがあり、主食、摂取量を%として数量を記入します。
また、食事は生活の基本です。楽しく満足していただけるような食事をしていただくためにも、全体的な様子も記録するよう意識しましょう。

食事の記録ポイント

・適切な姿勢や動作で食事をしているか
・食事の時間を楽しんでいるか
・介助は必要か
・嚥下はできているか

食事の記入例

〇コミュニケーションの様子→食事の際のあいさつ(いただきます!)と元気な声で食事を楽しまれる。いつもは他の利用者と会話をされながら食事を楽しむ様子であるが会話も笑顔も少なく摂取量が半分と食欲がないご様子。
〇食べ方→茶碗を持つもなかなか箸があがらない
〇姿勢→いつもより前傾姿勢になりやすい
〇吐いたとき→食事中は問題なく摂取していたが完食時に突然不調を訴え、トイレにて嘔吐、表情が青ざめていたため看護師に連絡
〇むせたとき・のどに詰まったとき→水分摂取の際にむせたためタッピングを実施その後落ち着く。ご飯がつまりタッピング等行うも出てこないため看護師により応急処置を行い救急搬送される。

食事記録の良い・悪い例

悪い例
18:00 夕食。はじめはよく食べているが、そのうち箸がとまる。
18:30 声かけ、一部介助。ずり落ち気味なので、姿勢をなおす。好き嫌いがある。全体で2割くらい食べている。

良い例
18:00 夕食。はじめよく食べているが1/3摂り20分ほどで箸を置き、目をつぶっている。口の中に食べ物が残っている。むせ込みなし。
18:30 声をかけ促すと少量は自力で摂るがすぐ止まる。ずり落ち気味なので身体を引き上げクッションを入れ姿勢を保持。一部介助し唇に食べ物当てると口を開き食べる。きんぴらは顔をしかめて摂らず、杏仁豆腐は介助で完食。主食1/3、副食2/5。

 

改善部分

食事が進まない理由は何か、どういった声かけや介助方法が有効だったのか記載しましょう。

入浴

入浴は利用者様の状態をよく観察することができるチャンス。
入浴の記録には、実施の有無、お風呂の種別(一般浴、中間浴、特浴)、湯温度、バイタル(血圧、体温、脈拍)入浴時の様子などを記入します。
入浴動作、入浴中やその後の様子、中止した理由や入浴に変わる清潔保持の実施などの記録をします、

入浴の記録ポイント

・外見に異常はないか
・心地よく入力しているか
・入浴を嫌がっていないか
・顔色や表情はどうか

入浴の記入例

〇浴室までの移動と衣服の着脱→移動時の様子を記録する。ふらつきがないか、着脱がスムーズで出来ているかなどに注意して記録をしてください。
〇浴槽への出入り→入浴時に表情が赤らんでいないか、出入り時のふらつきがないか、入局中に座位がきちんと保持できているかなど。
〇入浴中と身体観察→全身の皮膚状態を観察し、皮膚の赤らみなどの場所や状態を記入します。
発赤や傷がないか?
肌荒れはないか?
冬場は特に皮膚の乾燥しやすい事に注意
〇清拭→清拭対応になった経緯について記録をしてください。
例文:バイタル測定の際に血圧、脈拍の特変はなかったが体温が微熱(37.2)。ご本人から「今日は入浴をしたくない」との訴えがあり看護師に相談し、清拭と足浴を行うことを本人へ確認し実施する。

 

入浴記録の例文
衣服を脱衣時に背中に治りかけていた赤い発疹(小さい)が数か所増えていたため、他のスタッフ、看護師に報告と状態を確認した上、処方薬塗布を実施。また入浴中、普段は自身でシャワーを持つが「握る時に力が入らない」等の訴えがあり介助を行う。その状況を看護師からご家族へ報告を行い受診について検討してもうらう。また入浴におけるケアプランの見直しなど検討したい

 

入浴記録の良い・悪い例

悪い例
10:20 いつものように入浴拒否。2、3度声をかけ脱衣所へ。自分で脱ぐよう仕向ける。
11:00 一部介助にて洗髪・洗身。背中に引っかいた跡20×10cmあり。湯船鼻唄、5分で出るよう指示するが出浴拒否。

良い例
10:20 お風呂が空きましたと声をかけるが、「今日は朝湯をしたからいい」と断られる。浴室の椅子のことで相談があると話し脱衣所へ誘い、濡れるといけないのでと頼み脱いでもらう。
11:00 洗髪、右手のみで洗っており、左耳の上など一部介助。洗身、胸と腹、陰部は自分で丁寧に洗う。背中に引っかいた跡20×10cmあり。湯船では鼻唄。なかなか出ようとせず。一緒にビバノンノンと歌い、また来週!と終わるとスムーズに上がれた。

 

改善部分

「いつものように」といった表現は避け、誰が読んでも分かるようにしましょう。また入浴を嫌がる方にはどのように働きかけを工夫したのかも記入しましょう。また体を洗う際に、ご自身で何ができて、どこに介助が必要だったのかも具体的に書きましょう。

まとめ

充実した記録を書くためには、まずは「観察」することが大切です。観察するためには利用者のことを理解する必要があります。
アセスメント、ケアプラン等の状況や情報を基にして利用者を理解するためには「利用者との信頼関係を作ること」。が重要と思います。信頼関係を作る上では利用者とのふれあい、コミュニケーションを図ることです。
ご自身が介護をする中で今、お1人お1人の利用者のことをどれくらい理解しているか、コミュニケーションが取れているかを再確認してください。できていない部分などは他のスタッフや現場責任者の記録などを参考にしてみることも重要です。
誰に見せても恥ずかしくない記録を書けるようにチーム全体で取り組み、記録の情報を共有し自分たちが介護のプロとして自信が持てるようにがんばっていきましょう。

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