移乗とは?
車イスやトイレ、ベッドに利用者を移す、移動介助の一部です。正確には、ベッド上で臀部を動かす介助も移乗に含まれます。
認定調査の定義としては、立って歩くことのできる方に関しては原則移乗介助は発生しないと考えられているので、移乗介助を行う相手の多くは、自分では歩くことのできない介助量の多い方と考えられます。
ですので、移乗介助は介護の中でも特にコツが必要なものとなり、上手に行わなければ事故の危険や介護者が体を痛める原因にもなってしまいます。きちんと技術を習得し行いましょう。
移乗を始める前にしておくこと
移乗に限らず、何らかの身体介護を行う前には、必ず簡単にまず体を動かすなどして、いきなり行わないようにしましょう。体が準備できていないうちに介護を行うとぎっくり腰になったりするので、介護職にせよ在宅介護をされている家族にせよ、腰痛に悩む方はとても多いのです。
そしてまずは、移乗するものと利用者との距離や角度を、介護しやすいように配置します。
例えば、ベッドから車イスに移乗する際は、車イスをベッドの降り口30度前後の角度で斜めにセットしておきます。ベッドと車イスの距離に関しては、利用者や介助者の体格、身長によって違いはありますが、近い方がやりやすいでしょう。
移乗の際、足を踏ん張れる方は両足をきちんとついて力を入れてもらいます。そのためには、片麻痺のある方は、麻痺のない方(健側)に車イスを置いて下さい。車イスからトイレやイス、ベッドに移乗する際も同じです。角度、距離を測り間違えると体に負担がかかりますので注意しましょう。
移乗のポイント
ここでは全介助の方の移乗のポイントについてご説明します。
まず移乗は、いったん体を持ち上げて立ち上がってもらい、方向転換をして座ってもらう、この一連の動作から成り立っています。
立ち上がっていただく時は、まずきちんと両足が床に付くように、浅めに座りなおしてもらいます。車イス⇔ベッドなどの移乗の場合、必ずブレーキがかかっているか、フットレストが上がっているか確認します。これを忘れて車イスが動き出したり、フットレストに足をぶつけて怪我をしてしまう事故は非常に多いです。
必要であればアームレストを跳ね上げたり、外したりしておきましょう。介助者は、利用者のわきの下から両腕を入れ、背中に回します。その際中腰で行うと腰を痛める原因になりますので、ひざを曲げ、できるだけ体勢を低くします。
利用者が介助者の背中に両腕を回せるのであればそうしてもらいますが、できない方も多くいらっしゃいます。
特に麻痺がひどく、腕がぶら下がっているような方は、方向転換の際に巻き込み怪我をさせてします恐れがありますので、介助者と利用者で腕を挟み固定するようにしましょう。逆に、関節の拘縮がひどい方も、あちこちに腕をぶつけないよう注意が必要です。
そして、利用者が前傾姿勢をとり、介助者にもたれかかるような形で立ち上がります。介助者は目的側の足を軸足にして方向転換します。できるだけ両足を広げ行いましょう。もし利用者が可能であれば、移る側の柵や手すり、アームレストをつかんでもらい、ゆっくりと浅く座ってもらいます。
この時に奥までしっかり座ろうとすると負担が大きいので、いったん落ちないようにだけ座ってもらい、改めて深く座り直してもらう方がいいでしょう。この一連の流れの最中は絶対に利用者を支え続けて下さい。手を離してしまうと転落の危険があります。
まとめ
全介助の方の移乗介助はどうしても力仕事になりますので、介護者が体を痛めがちです。介助中どこかが痛むようであればそのやり方は間違っていますので、無理のない方法を探しながら行いましょう。
また、移乗の際の転落や転倒、どこかにぶつけての怪我の事故というのは非常に多く発生しています。
最善の注意を払いながら、双方に負担の少ないように行って下さい。