
排泄介助の際、利用者様から「男性(女性)には手伝ってほしくない」と拒否され、対応に迷った経験はありませんか。
異性から排泄介助を受けることに抵抗がある方に対しては、必要以上に視線を向けない配慮が欠かせません。
一方で、完全にその場を離れてしまうと、ふらつきによる転倒などが懸念されます。
また、普段は有効な声かけや接し方であっても、排泄というプライベートな場面では、安心につながらない場合もあります。
異性介助においては、日頃おこなっている生活援助以上に、利用者様が受け入れられる距離や介助の範囲を見極めることが大切です。
本記事では、介護福祉士として介護老人保健施設での勤務経験がある筆者が、異性による排泄介助を拒否された際に、利用者様の羞恥心に配慮しながら安全を守るための、見守りのポイントを解説します。
異性による排泄介助を拒否する背景を考える

排泄介助では普段の声かけや距離感が合わないこともある
介護現場では、認知症のある利用者様に対し、次のような対応をすることがあります。
・目線の高さを合わせる
・穏やかな表情で話す
・本人の気持ちを否定しない
・物理的な距離を近づけてゆっくり声をかける
こうした関わりを通して、利用者様が安心・納得して介助を受けられるよう働きかけます。
しかし、異性による排泄介助の場面では、普段と同じ距離感や声かけが適しているとは限りません。
排泄介助では肌や排泄物を見られたり、身体に触れられたりする場面があります。
そのため、異性が近くにいることや視線を向けられること自体に、強い抵抗を感じている可能性が考えられます。
こうした場合、普段どおりに目線を合わせたり、近い距離から説明を続けたりすることが、かえって負担となり、拒否を強めてしまうケースもあるのです。
ただし、拒否の理由を、「異性による排泄介助そのものが嫌なのだ」と、一括りにするのも避けたいところです。
異性介助の「どの場面」を拒否しているのかを見る
たとえば、「男性(女性)職員には排泄介助をしてほしくない」と言われても、排泄介助のすべてを拒否しているとは限りません。
トイレまでの付き添いや移乗は受け入れられていても、「下衣を下ろす」「身体に触れられる」「排泄中に見られる」といった、よりプライベートな場面になると、抵抗が表れる可能性があります。
そこで大切なのが、「どの場面で利用者様の反応が変わるか」を見極めることです。
下衣に触れたときに身を引く、排泄中に近づくと表情が硬くなるなど、介助の途中で拒否のサインが現れるケースも少なくありません。
こうした変化を観察することで、「異性による介助全般」ではなく、「脱衣」や「排泄中の見守り」といった「特定の場面」に抵抗があるのだと、判断する手掛かりが得られます。
夜間・明け方は異性介助以外の原因も考える
排泄介助に対する拒否の現れ方は、時間帯によって異なる場合もあります。
「日中」「夜間」「明け方」では、利用者様の身体の動きやすさ、眠気、疲労度などが変化するためです。
日中は異性の職員による排泄介助を受け入れていても、夜間や明け方になると拒否が出る、という利用者様もいらっしゃいます。
また、深夜や明け方は眠気が残っていることがあります。
服用している薬によっては、眠気やふらつきが引き起こされることもあります。
高齢者の場合、薬剤が精神状態や動作に影響を与えるケースも多いため、普段と異なる言動が見られた際は、単に「介助の拒否」と捉えず、身体状態や服薬状況も含めて、多面的に確認することが大切です。
拒否の背景にある「異性介助以外の要因」を捉えることで、その時々に合った適切な介助・見守りの方法が判断しやすくなります。
拒否の理由を一つに決めつけるのではなく、どの場面で反応が変わるのか、またそのときの身体状態はどうかを確認しながら、距離感や介助する範囲を調整していきましょう。
異性による排泄介助では見守り方を調整する

排泄中は視線を外しながら安全を確認する
筆者が介護老人保健施設で勤務していた際、異性による排泄介助を拒否する利用者様がいらっしゃいました。
当初は、ご自身でできる場面を見守りつつ、少し距離を取って対応していましたが、異性の職員が「視界に入る位置」にいるだけで、拒否反応を示されることがありました。
そこで、職員間で見守り方を共有し、排泄中はさらに距離を取り、居室内トイレの扉付近で待つようにしました。
完全にその場を離れるのではなく、何かあれば1〜2歩で、素早く身体を支えられる位置を保ちます。排泄中は基本的に背を向け、利用者様から視線を外していました。
その代わり、衣類がこすれる音や息づかい、手すりを握る気配などに注意していました。
衣類がこすれる音がすれば、動き出したことに気づきやすく、息が荒くなれば、下衣の上げ下げや歩き出しなどで力を使っている可能性があります。
また、手すりを強く握るような気配があれば、立ち上がりに負荷がかかっていると考え、必要に応じて振り返り、状態を確認します。
排泄後の拭き取りをご自身でおこなえている場合は、そのままご本人にお任せしました。
ふらつきが見られたり、下衣を持ち上げるのが難しそうだったりする場合のみ手を貸すなど、「安全面で必要な範囲に絞ったケア」に徹しました。
こうした対応を続けても、異性の職員による介助そのものへの拒否がなくなったわけではありません。
しかし、利用者様の視界に入る位置で見守りや介助をおこなう場合と比べると、激しく拒否される場面は明らかに減少しました。
利用者様が受け入れられる距離や範囲を探りながら、羞恥心への配慮と安全確保の両立を図った事例です。
明け方は安全面を優先して見守る
別の利用者様では、日中は異性の職員による排泄介助を受け入れていても、夜間から明け方になると拒否する様子が見られることがありました。
拒否の理由を異性介助だけに決めつけず、寝起きの眠気や睡眠薬などの薬剤、せん妄などが影響している可能性も考えながら対応していました。
明け方は日中よりふらつきが目立つこともあったため、安全面を優先し、利用者様の視界に入る位置ではありましたが、一緒にトイレ内へ入ります。
移乗や立ち上がりでは身体を支えるなど、必要な介助をする一方、排泄中は身体や排泄場面から視線を外していました。
異性介助を拒否する場合はパッド確認の回数にも配慮する
異性によるパッド交換を嫌がられる利用者様には、必要以上に何度も確認しないようにします。
頻繁にパッドの状態を確認することは、本人の羞恥心を強めたり、嫌な思いにつながったりする可能性があるためです。
筆者が対応していた利用者様の場合は、排尿量が多い傾向にある「寝起き」や、水分補給後の「おやつ後」などを確認の目安とし、ご本人に不快感がないか伺うようにしていました。
異性の職員によるパッド交換を拒否される場合は無理に進めず、同性職員へ依頼します。
すぐに交代できない場合は、パッド交換を提案した時間やご本人の反応、最後に交換した時間などを記録し、同性職員へ引き継いでいました。
異性介助を拒否された後も日頃のコミュニケーションを続ける
異性による排泄介助を拒否された場合は、排泄介助以外の場面でも、利用者様の反応に合わせてコミュニケーションの取り方を調整していました。
たとえば、食後にデイルームで一息ついているときや、穏やかに過ごされている場面では、挨拶や一言、二言の短い会話から関わります。
また、施設行事で撮影した写真をアルバムにして渡すなど、排泄介助とは関係のない場面で自然に会話するきっかけを作る工夫もしていました。
こうしたコミュニケーションを続ける中で、異性の職員への拒否が徐々に和らぎ、排泄介助を受け入れてもらえる場面も見られるようになりました。
異性介助を拒否されたときは、無理に関係を深めようとせず、ご本人が落ち着いている時間を選び、受け入れられる距離感から関わることも、有効なアプローチの一つでしょう。
異性による排泄介助は無理に進めず受け入れられる範囲を探る

異性による排泄介助を拒否されたときは、拒否をなくすことだけを考えるのではなく、利用者様が「どの場面・どの要素」に抵抗を感じているのかを丁寧に観察しましょう。
羞恥心に配慮して距離や視線を調整しながら、安全面で必要な介助を行います。
日頃のコミュニケーションによる信頼構築も並行しておこない、その方が受け入れやすい介助方法を模索していきましょう。
用語解説
異性介助(いせいかいじょ)…利用者様とは異なる性別の職員が介助を行うこと。
移乗(いじょう)…ベッドから車いす、車いすから便座など、異なる場所へ身体を移す動作のこと。
下衣(かい)…ズボンや下着など下半身に身につける衣類のこと。
せん妄(せんもう)…意識や注意力などに変化が生じ、混乱したり、普段とは異なる言動が見られたりする状態のこと。
居室(きょしつ)…介護施設などで、利用者様が日常生活を送るために使用する個室や部屋のこと。











