
「カスタマーハラスメント」とは、顧客からの不当な言動や要求によって、従業員の就業環境が害される行為を指します。
接客業で勤務している方が被害にあいやすい印象ですが、実は、さまざまな業界で深刻な問題とされています。
介護業界では、利用者さんやご家族からの介護職員への嫌がらせ、身体的・精神的な暴力、女性スタッフを対象にしたセクシャルハラスメントなどが、カスタマーハラスメントに該当します。
本記事では、介護現場でのカスタマーハラスメントの、実例や対処法を紹介するので、悩んでいる介護職員の皆さんは、ぜひ参考にしてみてください。
目次
介護現場のカスタマーハラスメントとは?種類と実例

介護現場で発生するカスタマーハラスメントには、さまざまな種類がありますが、とくに被害が多いハラスメントは、以下の3つです。
- 身体的暴力
- 精神的暴力
- セクシュアルハラスメント
ひとつずつ解説します。
身体的暴力
カスタマーハラスメントの中でも、最も被害にあいやすいのが「身体的暴力」です。
具体例は以下の通りです。
- 叩く
- 手をつねる
- 物を投げつける
- 蹴る
- 引っかく
- 唾をはく
- 首を締める
身体的暴力は、スタッフの怪我につながります。
暴力によってできた怪我や傷が、何年たっても治らなかったり、それらが原因で退職をしたりするケースもあります。
精神的暴力
精神的暴力は、身体への直接的な危害ではなく、言動によって相手を傷つけるような行為を指します。
具体例をまとめました。
- 威圧的な態度をとる
- 理不尽な要求をする
- 大声で怒鳴る
- 罵倒や暴言でスタッフの人格を否定する
- 土下座を強要する
利用者さんから職員への精神的暴力はもちろんですが、利用者さんのご家族が加担するケースも少なくありません。
職員に対し、過剰なサービスを要求したり、必要以上に苦情を言ったりする場合があります。
また、認知症が進行した利用者さんが、職員に過剰に暴言を吐いてしまうケースもあります。
セクシュアルハラスメント
セクシュアルハラスメントは、性的な嫌がらせや、相手の意に反する性的な言動を指します。
具体例は以下の通りです。
- 必要もなく、手や腕をさわる(身体的な接触)
- 女性のヌード写真や動画を、無理やり見せる
- 介護のサービス提供と無関係に、下半身を出して見せる
- 性的なサービスを要求する
- 卑猥な言動を繰り返す
利用者さんからの、性的な冗談や卑猥な言動で、職員が嫌な思いをすると、セクシュアルハラスメントに該当します。
また、セクシュアルハラスメントは、女性スタッフへの被害をイメージしがちですが、実は、男性スタッフが対象になるケースも、少なくありません。
介護現場のカスタマーハラスメントの発生要因とは

介護の現場で、カスタマーハラスメントが発生する要因はさまざまです。
主な要因を、3つにまとめました。
- 感情的なストレス
- 認知症の進行による脳機能の低下
- コミュニケーションのすれ違い
ひとつずつ解説します。
感情的なストレス
介護を必要とする状況は、利用者さん本人だけではなく、ご家族にとっても大きなストレス要因となります。
身体的な変化による不安、経済的負担、健康への不安や孤独感など、さまざまな要因が複合的に作用し、感情的な不安定さを引き起こすことが、多々あります。
特に、高齢者の場合、年を重ねるにつれて、今までできていたことができなくなり、そういった状態にネガティブな感情を抱く傾向があります。
怒りや焦り、不安などの感情が高まることで、職員に対して攻撃的な態度をとってしまい、ハラスメントの要因になるのです。
認知症の進行による脳機能の低下
認知症が進行すると、脳の前頭葉が萎縮してしまい、感情のコントロールが難しくなります。
以前は温厚な性格だった方が、人が変わったように怒りっぽくなるのも、認知症の影響です。
また、場合によっては、なぜ自身が介護されているのか理解できず、入浴や排せつの介助に対して、不快感を抱き、拒否反応をおこす方も少なくありません。
認知症の方が、暴力や暴言に至ってしまう要因はさまざまですが、複数の要因が重なってしまった結果であることがほとんどです。
認知症の進行による暴力や暴言が見受けられる場合は、単純なハラスメントと捉えるのではなく、医療的ケアによるアプローチが必要となります。
コミュニケーションのすれ違い
職員と利用者さんの間での、コミュニケーションのすれ違いが原因でも、カスタマーハラスメントは発生します。
利用者さんの自尊心を傷つけるような発言は、ハラスメントを起こすきっかけになります。
利用者さんがバカにされたと感じるような言葉を使っていないか、不適切な発言をしていないか、など振り返ってみてください。
また、ご家族に対して、サービス内容や普段の様子など、情報の共有が不足すると、不信感に繋がり、ハラスメントに発展する可能性もあります。
コミュニケーション不足による不信感や不安を防ぐには、定期的なミーティングのほかに、事業所内で報告書を共有することが効果的です。
カスタマーハラスメントは、利用者さん本人による問題も大きいですが、事業所内で予防できることを考え、職員やほかの利用者さんが快適に過ごせるようにしましょう。
カスタマーハラスメントへの対処法

カスタマーハラスメントへの対処法には、以下のようなものがあります。
- 相談窓口を利用する
- 上司や先輩に相談する
- 医師に、利用者さんの症状について相談する
- 複数の職員で対応する
- ハラスメントの対策マニュアルを作成する
- 研修に参加する
- 利用契約を解除する
カスタマーハラスメントを受けても、「相談窓口がわからない」「カスタマーハラスメントとして、認められないかもしれない」と不安に感じている職員や、我慢をしてしまう職員が多くいます。
しかし、我慢をし続けると初期対応が遅れ、ハラスメントによって怪我をしたり、さらに事態が悪化したりしてしまう恐れがあります。
相談窓口を利用したり、先輩や上司に相談したりするなどして、なるべく早めに悩みを共有するようにしましょう。
相談できる機関は、事業所のほかにも、都道府県や市町村、労働局などたくさんあります。
基本的には、完全無料で、かつ匿名で相談できますので、自分一人で抱え込まないようにしましょう。
相談窓口や研修でも対処できない場合は、弁護士に相談して、法的処置に出ることも検討しましょう。
まとめ

本記事では、介護現場で発生する、カスタマーハラスメントの実例や対処法を紹介しました。
対処方法は複数ありますが、決して一人だけで解決しようとせずに、上司や周りと協力をして、問題に向き合うようにしましょう。
それでも改善されず、「今の職場で働き続けることが難しいかもしれない」と感じたら、転職をすることも一つです。
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