介護施設のクレーム事例からみる利用者様家族への対応方法

介護施設では、利用者様やそのご家族の意見や要望に対してできる限り対応する努力をしています。しかし中には、行き過ぎた要望や理不尽な要求もあり、必要以上にクレームをつける利用者様のご家族もいらっしゃいます。今回は実際にあった苦情と利用者様家族への対応についてご紹介します。

介護サービスは、介護の目的に従うのかサービスに徹底するのか

介護施設は介護サービスを利用者様に提供し、その対価として介護報酬の9割を介護保険から受取り、1割を本人に負担して貰います。即ち施設を運営する株式会社からすると、利用者様はお客様です。そして介護施設は、競合会社に勝ち抜くためにはより良い介護サービスを提供することが使命となります。

 

介護サービスについて、介護保険法では「利用者の尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように行う」と定められています。介護職員は、このような介護をするために日々務めています。

しかし一部の利用者様やそのご家族様は、お金を払って施設を利用してあげているのだから「サービスをするのは当たり前」と、過剰なサービスを求めてくることがあります。

 

介護サービスは、提供する側とされる側の考え方の違いが多いように思えます。そのため介護の本来の目的に従うのか、お客様サービスに徹底するのか、施設内でも常に議論が渦巻くのが現状です。

 

それでは実際にあったクレームと解決策をみていきましょう。

事例1:貴重品の紛失

介護施設は共同生活をする場所なので、高価な物や大切なものはお持ちいただくことがないように利用者様にお願いをしています。また、利用者様の手荷物の紛失を防ぐために、利用者様が施設に到着すると、介護職員は利用者様の持ち物の種類や数、特長などをチェックし、帰りも同じことを繰り返します。

 

ところが利用者様は、施設内のどこかに物を置き忘れたり、紛失してしまったりすることが多々あります。また、介護職員も人間ですから、時には種類や数のチェック漏れなどのミスもあります。

 

このような時、施設から戻ったお父さんやお母さんの荷物の中に、持って行ったはずの貴重品がないというクレームが起こり得ます。中には「あれは高価だったのに」と紛失したことを全て施設の責任と決めつけて、弁償をしてほしいと要求してくる利用者様ご家族もいます。

 

施設側の対応としては、事故トラブル報告書を本社へ提出し、弁償の件を相談します。しかし施設側にも決まった手続きが必要なため、そう簡単に弁償することはできず、手続きにも時間が掛かります。しかしその間もご家族から「この対応はどうなっているのか」と執拗に電話がかかってくることがあります。

 

こうした事例の対策としては、職員による持ち物チェックを2、3人の複数体制で行うことでチェックの強化をしミスを防ぐことが重要です。また利用者様のご家族に対して、大切なものや高価なものを荷物に入れないように、改めて説明し理解していただけるように努めることです。

 

弁償をするかしないかは、慌てずに事実関係をハッキリさせてから行動しましょう。

事例2:入浴を強く希望する家族

ショートステイやデイサービスの利用者様のご家族は、入浴を希望する方が多くいらっしゃいます。通常、入浴前に体温や血圧などのバイタルを測定して問題ないかを判断します。この時、体温や血圧が基準値より高いと入浴を中止することがあります。

 

ところが利用者様家族の中には、「家で入浴をできないからお金を支払って施設にお願いしているのに、なぜ入浴ができないのか」「体温や血圧はいつも高い方だからこれが普通である」「家族が許可をしているのだから入浴させてほしい」と要求をする場合があります。

 

クレームは施設を利用する前日、お迎え時、利用者様が家に戻ってから、と何度も繰り返されます。具合の悪い利用者様ご本人のことを考えずに執拗に連絡し、介護職員の時間をとってしまいます。

 

このような場合の対策方法としては、管理者やケアマネージャーが、ご家族に入浴できない理由を医学的に丁寧に説明することです。それでも理解していただけない場合は、施設の利用をお断りすることも視野にいれたほうが良いでしょう。

事例3:転倒

介護施設での転倒は、絶対に発生しないようにするべきです。

しかし、どんなに気をつけていても転倒が発生することはあります。またショートステイでは、利用者様が夜間に急に立ち上がり職員が発見した時にはすでに転倒していたというケースがあります。

 

当然施設側に責任があるので病院へ診察に行き、利用者様のご家族に謝罪します。ところが転倒に対するクレームを言うだけではなく、「介護負担料は支払わない」と発言する利用者様家族もいます。

 

このようなケースの対応方法として、まずは転倒事故を発生させないことです。日頃の職員への技術的な指導も、現場のリーダーに任せるだけではなく、時には管理者も加わってください。万が一のことがあった場合に謝罪をするのは、管理者だからです。

また、技術が未熟で、利用者様を転倒させてしまう回数が多い職員がいましたら、介護方法に問題がないかチェックをしましょう。一般的には、ある程度の転倒リスクを承知の上で、施設を利用する方が多いです。

 

しかし利用者様家族の中には、日頃の自宅介護でご本人の状態を把握してない傾向があります。施設利用前のアセスメント時に、利用者様のご家族がどれだけ介護に参加しているか観察しましょう。

 

アセスメント内容が不十分な場合は、介護職員と看護師でじっくり受け入れの打ち合わせをしたほうがいいでしょう。

まとめ

利用者様家族に適切に対応することができれば、介護施設では本来の介護サービスに打ち込む時間ができます。しかし一度対応を誤ってしまうと、施設全体が揺れ動き介護職員のなかでも責任の擦り合いに繋がることもあります。利用者様家族の対応には職員一丸となって丁寧に対応するように心がけましょう。

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