元モデルであり、現在は「日本一かっこいい介護福祉士」として注目されている杉本浩司さん。杉本浩司さんの前編の独占取材では、杉本さんの「かっこいい介護福祉士」までの道のりを紹介した。今回は杉本さんによる介護業界の未来の展望や「どうしたら職場の人間関係が良くなるのか」、「介護職員は今後どのように活躍していくのか」についても紹介する。杉本さんに続く「かっこいい介護職員」になるためのヒントが盛り沢山だ。
目次
10年後の介護業界は確実に変わる
「自然と介護業界は変わっていく」と杉本さんは考えている。それは何故か?
10年後、団塊の世代が高齢者になる時代が来る。よく言われる2025年問題のように、ニュースでは、介護士不足に陥るというネガティヴな情報が多いが、杉本さんはポジティヴな面も多いと感じている。時代の変化により、生活の利便性が格段に高くなっている今、未来の高齢者は、もっとアクティヴになる。街や社会全体でのサポート力が必要とされるようになる。
例えばデパートでの買い物の際、試着の手伝いをできる人が必要になる。飲食店でも、食事の介助が必要な時代が来る。介護職は「全サービス業で必要とされ、社会に誇れる仕事」に自然となっていくはずだと杉本さんは確信している。
10年後に限らず、介護は本来クリエイティヴな仕事だ。おむつを変えたり、お風呂に入れてあげたりするだけの仕事ではない。歩けなくなった人が、再び歩けるようになる喜びを知り、ミキサーにかけたものしか食べられなくなった人が、好きなものを食べることの楽しさを知る。
その先にある「その人の当たり前の生活の夢」を叶える。例えば、温泉旅行やお墓参り、好きなものを食べに行くなど。そんな風に、一度失った喜びをもう一度その人の人生に提供することができる仕事なのだ。もっともっと、現場で支援をする人たちにこそ、その認識を持ってほしいと杉本さんは感じている。
介護業界をみんなでもっとかっこいい存在に!
介護の仕事について、介護のプロである働く人達自身が正しく理解していなければ、業界に対して世の中からネガティヴなイメージを持たれてしまうのは当然のこと。業界のイメージが先行し、介護職員まで暗い人たちなんてイメージを持たれがちだが、決してそんなことはない。みんな音楽やおしゃれなど、様々な趣味を持ち、他の業界と同様の元気な若者達が夢を持って働こうとしている業界だ。
まだまだ介護業界で、フォーカスされる人は限られているが、もっとみんなで底上げし、介護の魅力を発信していってほしいと杉本さんは考える。そのためにも、まずは自分達が憧れの的となる存在でいたい。
「日本一の介護福祉士」と言われることをプレッシャーに感じることはあるか聞いてみたところ、日本一であり続けることで、自分と会った人のモチベーションがあがったり、目標にしたりしてくれるなら、それは嬉しいとのこと。
みんなの中で身近な存在でありたいと思う。髪型を真似してみましたなんてたくさんの方から連絡をもらったときは「そこー?」と不思議な気持ちになるけど、と笑いながら答えてくれた。人によってはプレッシャーに感じてしまうかもしれない「業界の一番」という肩書きだが、杉本さん自身、そんなプレッシャーも楽しんいるように見えた。
職場の人間関係を良好にする3つの仕組み
前回の記事でも語っていただいたように、杉本さん自身もぶつかってきた“職場の人間関係”の壁。多くの部下を持つ立場になった杉本さんだからこそ見える、人間関係を良好にするためのポイント・仕組みを3つ紹介する。
法人理念の共有
法人理念とは、各法人が介護において何を重要視しているかという考え方だ。どの法人でも、面接時に必ず伝えているはずだが、現場で実践できていない先輩やリーダーが多いことが一番の問題だと杉本さんは考える。
法人理念は、仲間と同じ方向を向くための大切な軸。すぐに実践できることばかりではないとしても、今行っている仕事の先に、法人理念のゴールがなければ、やりがいを見失う人も多いのだ。
この基本的とも思える「法人理念の共有」の時間を軽視してはいけない。
同期意識の強化
まず注目してほしいのは、業界の離職率について。全産業の離職率は15.5%、介護職の離職率は16.7%、その差“1.2%”という数値だけをみると、他の産業と介護業界の離職率に大きな違いはないようだ。
しかし、よくニュースでも取り上げられる“介護士不足”の問題。このような問題を生み出す、介護職における離職率に対する割合の特徴は、「3年以内の離職率が67.2%(入職後1年未満39.9%、1年以上3年未満27.3%)」ということ。つまり、介護業界は、早期退職者が多いのだ。裏を返せば、3年以上勤めれば、人が辞めないのが介護業界である。3年目までの介護職員のケアをもっと重要視してほしいと杉本さんは語る。そして杉本さんが実践していることが以下のような取り組みだ。
《入社後1.2年目のための新人研修》
この研修は、外部会場で外部講師によって行われる。そして杉本さんから講師にお願いすることは、「しっかりと愚痴や不満を言える環境を作ってあげてほしい」ということ。そんなことをしたら、モチベーションが下がってしまうだけなのではないかと感じた人もいるだろう。しかし、杉本さんの狙いは、“同期意識・仲間意識の構築”である。
配属が決まると、同期入社の仲間達とも離れ離れになってしまうことが多く、現場での悩みや想いを共有できる環境がなくなってしまう傾向にある。そこで、入社2年目までの同期意識を強化するべく、あえて不満や愚痴を言える関係性を作ってもらい、働きながら共に切磋琢磨できる仲間がいるということを、早い段階で気付いてもらうのだ。「介護職の魅力を知らないまま、希望を失い辞めてしまう若者を減らしたい。」そんな想いのもと、実施されている。
先輩·後輩の関係性の構築
上では、若手職員の関係性構築のための取り組みについて紹介したが、もう一つ杉本さんが実施しているのが、「何層にも組む面談」である。
どの法人にも、部長、リーダーなどの役職があるだろう。職場の面談では、1:1で少ない回数しか実施されないのが一般的だが、「何層にも組む面談」について以下の例で説明しよう。
例)施設長A/リーダーB/サブリーダーC/従業員10名の法人の場合
1層目 | サブリーダーCと、従業員 |
2層目 | リーダーBと、1層目で不満が残った従業員 |
3層目 | 施設長Aと、2層目で不満が残った従業員 |
1層目の面談後、各従業員はサブリーダーCが面談した状況を記載するシートを作成する。そのシートは、施設長A、リーダーBにも共有される。従業員が10名もいれば、まさに十人十色。サブリーダーCとの面談後に、モチベーションがあがる人もいれば、そうではない人もいるはず。
不満が残った人が5人いたとして、今度はリーダーBと、一人ずつ面談を行う。リーダーBとの面談後も不満が残った場合は、次は施設長Aと個人面談を行う。つまり、1回の面談で気持ちの整理ができなかった人には、何に悩み苦しんでいるのか法人全体で向き合うのだ。
最初から施設長が面談しないのは、それぞれの立場とのタテの関係性を強めることが目的。リーダーBやサブリーダーCにとっては、マネジメントの勉強にもなる。組織内での若手社員の状況把握やフォロー体制ができ、若手にとっても困った時に相談しやすい環境もできる。結果として、先輩・後輩のより良い関係性が構築されるのだ。
「法人理念の共有」、「同意意識の強化」、「先輩・後輩の関係性の構築」、これらの3つの取り組みを本気で実践すれば、人間関係の良好な職場を作れるはずだと杉本さんは考える。
杉本さんに近づける?!今から実践できること
杉本さんの合言葉は、「ニコニコ·キラキラ·ワクワク」
これは、介護職員として、そして人として、杉本さんが意識していること。認知症の方は、何を話したか、相手が誰なのか忘れてしまうかもしれない。もしかしたら、いつも初対面の感覚かもしれない。それなら、いつだって満面の笑顔で記憶してもらうべきかなと思っている。「くしゃ笑顔」と言われているこの笑顔。
笑顔の眩しさに、編集者もカメラマンも、「わあ!」と思わず声をあげてしまうほど。きっとその輝きやパワーは、日頃の意識や努力が積み重なっているからこそ、発揮されるものだ。
ビジネスで大切にしていることは何か聞いてみたところ、気持ちの確認だという。それは『自分自身がやりたいことの確認』。自分自身がやりたいことをずっと大切にしてきた。いつかできたらいいなと思っていた夢が、一つずつ叶い始めているという。介護ユニフォームのプロデュースをする、“夢やありがとう”がテーマの曲のミュージックビデオに出演する。自分のやりたいことを追いかけることを大切にしていれば、夢は夢で終わらないのだ。
杉本さんはこれからも更に大きな夢を追い続ける。
クリックジョブ介護を利用する方へ杉本さんから2つのアドバイス
数を打て!そしてポジティヴであれ!
介護は、10人の入居者様がいれば、10通りのやり方が心要な仕事。自分のやりたい介護ができなかった、上手くいかなかったと嘆く人は多いが、それは介護だから言える話なのか?例えば、営業職や広告マンが自分のやりたい仕事だけをしているだろうか?きっとしていない。
今の仕事に納得がいかないのは、それだけ介護が好きな証拠だ。妥協せずに自分のやりたい介護を貫きたいという気持ちは大切にしてほしいし、自分が悩んでいることを否定せず、それだけ仕事への想いが大きいのだと捉えて欲しい。
環境は自分で変える!そして誰かに共有しよう!
環境を変えるには、自分で変えていくしかない。同僚、先輩、後輩と誰か味方をつくるなどアクションを起こさないと何も変わらない。「制限をぶっ壊す」そして自分を勇気づける思い込みを作って「行動」する。
いきなり行動に移すのは勇気のいることだ。まずは、誰かに話す環境を作ってほしい。同じ職場にいなくても、介護業界に仲間を作れば良い。実際に勉強会やセミナーに足を運ぶ仲間達は、この会に参加することをモチベーションに、1ヶ月頑張れたという意見も多い。話す相手がいないなら、僕に話してほしい。ひとりきりで頑張る必要はないのだ。
それらが難しければ、多少の妥協をして働くしかないのではないかと思う。妥協せずに働きたいなら、とことん自分に合った職場を探してほしい。既に当社のクリックジョブ介護を利用する人たちも、『誰かに話したかった、自分に合った職場を本気で探したい。』という想いを持つ方たちが沢山いる。そんな想いに応えるために、当社のエージェント達も、本気で向き合っている。
編集者が伝えたい!杉本浩司さんの魅力
杉本さんの取材を終えて感じたことは、まさにPOWER ! !である。
強く優しいハートの持ち主である杉本さんには、カリスマという言葉がぴったりだ。彼の周りにはいつも沢山の人がいるのだろうと感じた。だが、彼の人を惹きつける魅力の奥には学生時代の沢山の挫折や、苦い思い出があるのだろう。強い人は弱さもちゃんと知っている、とよく言われるが、それを実感させてくれる人物だ。そして、表には見せない圧倒的な努力と高い志が、内から溢れるパワーと化しているのではないかと感じた。
“日本一の介護福祉士”というと、少し近付きがたいイメージを持ったり、自分には到底手の届かない存在だと思ったりする人もいるかもしれない。だが、全くそんな風に感じることはなかった。杉本さんとの話の中で何回笑わせてもらったか分からない。失礼かもしれないが、確かに杉本さんが自己紹介でおっしゃっていた“おもろい兄ちゃん”でもあった!初対面の私達にもフランクで温かい人。そんな器の大きな杉本さんは、やっぱりかっこいい。
1977年千葉県生まれ。介護福祉士/介護福祉施設「ウエルガーデン伊興園」施設長/テレビなどの媒体に多数出演/「日本一かっこいい介護福祉士」として注目されている/全国で自立支援、人材育成等の講演を年間約50回、累計約500回行っている
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