自己覚知
いかなる場合でもでも適切な介護を行うために、自分自身の性格や考え方の傾向などについて客観的に把握し、勝手な思い込みや偏見から生じるミスを回避することを指します。人によって価値観は様々であり、自分と異なる価値観を持った人を排除しようとしたり、否定的な態度を取っていると対人援助は上手くいきません。しかし、それは自分の考え方や感情、思いなど自分自身の捉え方でしか他人を理解することはできないのです。つまり、自分の価値観や状態、感情、考え方を知った上で対象者に接していくことが大切なのです。
ではここで介護現場の具体例を見てみましょう。食事の時間をとることもできないほど忙しい日に、徘徊の症状がある要介護者さんが外に出ようとしていました。普段なら、しばらく一緒に歩いて会話をしながら「ごはんにしませんか?」と興味を別に向けるような対応をしているのですが、この日は忙しく、やらなければいけないことがたくさんあったため、ついイライラしてしまったのです。こうした時に声を荒げて怒ってしまうことってありますよね。こういう日は仕事が終わったあと自己嫌悪に陥ってしまうこともあるでしょう。そこで、ひと段落したときに、自分は忙しくなるとイライラしやすい傾向にあるという事を知ることが大切なのです。そうすることで忙しい時ほどイライラしないようにしようと意識して仕事に向き合うことができるでしょう。
こうした自己覚知というのは要介護者との関係のみならず、職員間、すべての人間関係において非常に大切なことであり、介護を行う人以外でも理解するべき、そして実践すべきことなのです。通勤のすき間時間等を利用して、1日に1回短時間でも自己覚知できると充実した生活が送れるようになるでしょう。