音楽療法士
音楽療法士とは音楽療法を用いて回復や改善に取り組む対象者に対してのプログラム作成や補助などを仕事内容とします。音楽療法とは音楽の持つ生理的、心理的、社会的なリラックス効果を活かして心身の障害の回復や機能の維持改善、生活の質の向上や行動の変容などを促す療法のことを言います。この治療法の対象者は認知症の高齢者や精神障害者、交通事故などによる脳障害後遺症を持つ患者、脳性まひや小児まひ、自閉症児・者で、主に福祉や医療現場で用いられる療法です。音楽療法士は1人1人の症状や状況に合わせて、音楽を聞かせたり、歌ったり、音楽に合わせて体を動かしたり、時には楽器を演奏したりなどの音楽的なプログラムを作成し、その中でのサポートなども行います。
具体的な例を挙げると、歌を歌うという一つの取り組みによって肺活量の増幅や新しい言葉の学習、記憶力を向上させる効果を得ることができます。また、楽器を演奏することによって手や指の運動と目と手の動きの連動などを促す効果があります。このように音楽療法士が計画的、意図的にテンポやリズム、ハーモニー、音などの音楽的要素を生かしながら本来の治療目的を達成することでリハビリの支援を行い、心身的疲労を軽減しながら効果的な治療を行っていきます。音楽療法士は国家資格ではなく、民間の資格の「音楽療法士1種・2種」や日本音楽療法学会による「認定音楽療法士」を取得する必要があります。「音楽療法1種・2種」には協議会によって認定された音楽療法士養成講座を持つ大学や短大で指定されている科目を学び、卒業することが条件とされています。
「認定音楽療法士」は独自の認定基準による書類審査と面接試験の合格が条件とされ、資格取得後も5年ごとに更新の審査があります。日本では音楽療法はあまり普及しておらず、音楽療法士としての収入のみで生活できる人はほぼいません。医療や福祉の現場という慢性的な人手不足を課題とする現場では音楽療法はレクリエーションとして捉えられてしまうことも多く、音楽療法士を常勤で採用する施設や病院が少ないのが現状です。